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私は不登校の子どもを支援して20年以上経ちますが、ここ数年でも不登校児童が右肩上がりに増加する中、不登校支援のかたちもこの20年で大きく変化してきたなぁと感じます。
自治体も不登校を社会課題と位置づけ本腰を入れて対応するようになってきて、特例校やスクールカウンセラーも増えましたし、民間のフリースクールやサポート校なども増えてきて、不登校になってからの選択肢もとても増えていい傾向だと感じています。
そんな様々な支援がある中でエンカレッジは、設立以来「公認心理師(国家資格)が家族療法と認知行動療法の考え方を用いて復学意欲を促す」ことを一貫して行ってきました。
この「公認心理師が行う認知行動療法」と聞いても、ほとんどの方がピンと来ないのではないでしょうか。実際、よく質問をされます(笑)
そこで今回は、エンカレッジが普段からどのようなアプローチをしているのか、少し具体的にご紹介したいと思います。
私たち不登校支援グループエンカレッジでは、今まで1000人以上の子どもたちの復学をサポートし、設立17年の現在も復学率は100%を維持しています。不登校に悩む方向けに無料のLINEやメルマガの発信もしておりますのでご活用ください。
認知行動療法とは
認知行動療法(CBT)とは、その人の物事のとらえ方(認知)や行動に働きかけ、ストレスを軽減する考え方に導く心理療法です。子どもにはあまり使われることはなく、大人にも用いられるカウンセリングの王道手法と言えます。
こどもは認知に関してはまだ成長過程であることから本格的に認知行動行動療法を実践するのが難しいというのもあります。しかし、考え方自体は子どもにも応用が可能であると考えエンカレッジでは認知行動療法の考え方を取り入れているのです。
例えば不登校の子に対しては、以下のようなとらえ方をすることで、認知の偏りやゆがみを修正していきます。
- 「担任の先生に叱られて怖かった。きっと私のことが嫌いなんだ」→「担任の先生は、たまたま急いでいて余裕がなかっただけかも」
- 「またテストで悪い点を取ってしまった。僕は何をしてもダメな人間だ」→「次頑張れば大丈夫!こういうときもあるよね」
- 「僕だけ体育で二重とびが出来なかったらどうしよう。体育の授業行くのが怖い」→「誰だって苦手なものはある。全部がうまくできる人はいないから、体育が苦手なら他で頑張ろう」
ストレスは環境から生まれることも多いですが、自分自身の不安から生まれることも多いです。つまり、自分自身の物事のとらえ方によって、自分自身でストレスを作ってしまうのです。
真面目な人、神経質な人、負けず嫌いな人、心配性な人、周りが気になる人、完璧主義な人。そのような性格傾向の人はストレスを貯めやすい傾向があります。それと同時にそのような性格傾向は不登校になりやすい性格傾向でもあります。そういったストレスを抱えやすい性格傾向や不登校になりやすい性格傾向を変容させていくことで、失敗を怖れなくて良くなったり、追い詰められている感じが軽減したり、肩の力が抜けて生きやすくなることも多いのです。
このような、ストレスを抱えやすく不登校になりやすい考え方・思考回路を、柔軟でストレスを抱えにくく不登校になりにくい考え方にシフトしていくことを心理学の言葉で認知変容と言い、認知行動療法ではカウンセリングによって認知変容を促して行きます。
認知行動療法の不登校カウンセリング例
近年の不登校で多いのは、いじめよりも、学校生活への恐怖感や無気力です。
同じクラス、同じ授業であっても、何事もなく毎日登校する子もいれば、不登校になる子もいます。この差は何でしょう。
もちろんその子の性格・気質も関係しますし、学校や先生との相性もあるでしょう。しかし一番多いのは、その子自身の物事の捉え方が学校生活を辛くしてしまっているのです。
そのような子へは、認知行動療法のアプローチが最適です。具体的にどのようなアプローチ意をするのか、例をご紹介しますね。
小学1年生・女の子「先生が怖い」
以前カウンセリングしていた小学1年生の女の子は、学校に行きたくないのは「先生が怖いから」と言っていました。
先生の指導が過剰に高圧的だったり理不尽な場合は、先生に改善ポイントがあるので学校と掛け合う方法がありますが、しかしこの子の場合は「担任の先生が大きい声を出すのが怖い」ということでした。
おそらくHSCなどの繊細な気質があるのでしょう。自分が叱られていなくても、クラスメイトが忘れ物をして先生に怒られているのを見るだけでも心が締め付けられるようで自分のことのように辛くて、教室にいられないというのです。
このように、人の痛みを自分の痛みのように感じられるのは、感受性が豊かで優しく素晴らしいことです。しかし、繊細な分だけ心が疲れてしまってはその子が辛いですよね。
しかもこのままでは、小学校だけでなく中学校・高校、社会人になっても周囲を気遣い過ぎて心が疲れてしまう可能性が高いです。そのため、子どものうちにしっかりと認知変容して心を軽くする練習をするのが将来のためにもなるのです。
そこで、まずはその子本人に「周囲のことをとても良く気遣っているんだね」と、自分自身に繊細な気質があることを知ってもらいます。感受性が豊かで、周囲のことを気遣えて、細かいことにも気が付くのは素晴らしいことで、他の人はそこまで気にしていない、気づけていないんだよ、とまずは気づいてもらうのです。
そこにさらに、「でもそれって素晴らしいことだけど、とても疲れちゃうよね?」と聞いてあげたのです。
「そうなんだよ。疲れちゃうんだ」
これが大きな変化でした。
そうして自分で「自分は繊細なんだ、細かいことを気にし過ぎるところがあるんだ」と心構えが出来た上に、それは確かそれで疲れてしまうから困っているんだと思えるのです。そして、疲れるのは嫌だなと思えることでそこを変えていきたいと思えるようになるのです。疲れないために「気にしないようにしてみよう」「忘れ物をして先生に叱られた子自身が、実は叱られたことをあまり気にしてないみたい。だから私も気にしないようにしてみよう。その方が楽だ」と認知変容しやすくなっていきます。
自分の性格傾向がよくわからないとなんでなんだろうと苦しくなりますので、そこが整理できるだけでも楽になる子はいます。しかし、1年生のように自己分析できない場合は、それが疲れることになるんだと認識することで、疲れないようにしたいなと思えば変わってくる場合もあります。
大人であれば、自己分析で性格傾向を把握し整理する外在化が有効かもしれませんが、子どもには、それが疲れるから疲れないようにしたいという単純だけども意外に変容しやすい考え方でやってあげることもできるのです。
この子の場合は、こうして「お友達が叱られているときの認知変容」が出来たら、「自分が忘れ物をしたときの認知変容」「算数で悪い点を取ったときの認知変容」…など、様々なケースで1つずつ、ゆっくり着実にカウンセリングをしていきました。
そうすることで、徐々に思考の型が変わっていき、ネガティブ気味だった思考もポジティブな傾向が増えていきました。細かいことを気にしないスキルがついて、先生や学校生活が怖くなくなって来たのです。
そしてひどかった登校しぶりもすっかりなくなり、生き生きと学校に通えるようになりました。
小学6年生・男の子「何事もやる気が出ない」
「何事もやる気が出ない」というのも、近年とても多くなっている不登校原因です。
「やる気が出ないのはココロが疲れている証拠。存分に休ませてあげましょう。好きなことをさせて自分から登校するのを待ちましょう」という教育評論家もいますが、ただ様子を見続けるのは場合によっては危険です。何年も引きこもってしまうリスクがあるからです。
以前エンカレッジにご相談頂いた小学6年生の男の子も、なんとなく学校に行く元気がなくて不登校になった1人でした。元気がないのをお母さんが心配して、スクールカウンセラーの「様子を見ましょう」という言葉を信じて気づけば半年以上も不登校状態が続いていました。
しかし、自宅で休ませてあげているはずだったのに、状況は良くなるどころか徐々に無気力が自暴自棄になり、暴れたり反抗することが増えたため家族ではどうすることも出来ずエンカレッジにご相談に来られました。
エンカレッジでは公認心理師がご自宅を訪問して、カウンセリングやアセスメント(分析)を行います。アセスメントの結果、この子は完璧主義思考があり、「いつもテストで良い点を取らなければ」「ミスはあってはならない」といったプレッシャーを自分自身でかけ過ぎていることが不登校の要因ではと考えました。
親御さんからもお話を伺うと、良かれと思って幼少期から褒めて育てていたとのことでした。しかし、《褒める》がいつの間にか《おだてる》になってしまい、褒められることが当たり前化し、それが完璧主義思考に繋がった可能性もわかりました。
そこで少しずつ、この子にも認知変容のカウンセリングをしていきました。完璧じゃなくてもお父さんお母さんは君のことが大好きだということ、自分のミスを許せるからお友だちのミスも許せること…少しずつ気づきを与えられるように対話していきます。
同時に親御さんにも、家庭内対応を見直してもらいました。「~しなければいけない」「~すべき」の言葉を減らすこと、《褒める》と《おだてる》はつい混同されてしまうので、結果ではなくプロセスを労い「認める」ことを意識して頂く等をお願いしました。
その結果、毎週のカウンセリングと日々の家庭内対応を変えたおかげで、約2か月後には再登校することが出来ました。再登校日は今までの反抗が嘘だったかのように、さらっと通学路を歩いて行けたのが印象的でした。
「認知行動療法を用いた不登校解決法!復学支援例2つを紹介」まとめ
現代では不登校でもフリースクールやオンライン学習など様々な選択肢も選べるようになってきたので、登校しない選択をされる方も多いですね。
もし、登校しない選択が本当にその子に合っているのなら、様々な選択肢があることは良いことだと私も思っています。
しかし、就職というフィールドに立った時に自由度が多い環境で育った子どもたちに現代のストレス社会は時に厳しく立ちはだかります。不登校の人数も年々増加し、学校に適応しにくい子どもたちが約29万人います。しかし、生産年齢とされる15歳から64歳の引きこもりの人数は約146万と約5倍であることも事実です。学校に適応するのも難しくなっていますが、社会に適応するのはもっと難しいというのも数字が示しているのです。
長い人生のことを考えたときに、私が思うのは今の段階で学校に適応できる力がある子は早い段階で学校に戻れるようにしてあげたいということです。色々な考え方があるのもわかりますし、それが合っている子もいると思います。ただ、学校に戻る力のある子や、学校に戻りたいと心では思っている子は、第一選択肢はまずは学校であってほしいのです。学校に戻るまでの時間が長くなれば長くなるほど学校に戻るハードルは高くなり、自由に過ごした時間が長ければ長いほど、社会の壁も高くなります。だからこそ、今、お子さんが不登校で落ち着いている状態ならこれ以上待っている時間はもったいないのです。
常に親御さんに気を付けて頂きたいのは1点だけです。登校しない選択の先にその子の「自立」があるかどうかです。社会に出たときに必要な対人スキル、基本的な読み書き計算の学力、ソーシャルスキル、自己管理能力、レジリエンス…なども身に着けることは重要なので、選択の先に自立があるかは考えてもらいたいです。
もちろん、今はクラウドワークスやココナラなど自分で仕事を受注して個人でもやっていける時代ではあります。それが合っているのであればそこを伸ばしてあげるのも大切です。プロゲーマー、ユーチューバーも素晴らしいと思います。しかし、表面上では見えてこない、地道な努力はどんな場合でも必要です。自由な環境で自分を律しながら進めていく力があるかもよく見てあげる必要はあります。
かなり脱線してしまいましたが、お伝えしたいのは学校がすべてということではなく、大切なのはこれからの人生を歩んでいく上でその子がどのような選択肢であっても自分で成長していける考え方、自立していける力を身につけていけるかどうかだと思うのです。
一度不登校になったとしても、認知行動療法のカウンセリングを重ねることで思考のクセが矯正されていけば、再登校後の再不登校にもなりにくいです。そしてそれは学校復帰ということだけでなく、これから生きていく上で子どもたちの財産になると思っています。
認知行動療法で不登校を乗り越えることは、自らの思考のクセに気が付き対処法を学ぶ経験だけでなく、その子にとって一生涯使えるスキルになるはずです。ただただ今現在の不登校を解消するのではなく、再登校の質にもエンカレッジはこだわっていきたいとこれからも考えています。
心理の専門家によるアセスメント(分析)を経て、認知行動療法のカウンセリングによる認知変容、確かな自己肯定感と自己効力感を取り戻す経験…再登校までのプロセスを大事にしたい方に認知行動療法の考え方はおすすめです。
認知行動療法のカウンセリングについてもっと詳しく知りたい方は、エンカレッジの無料オリエンテーションでご相談も承っていますのでご連絡くださいね。
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