親の悩み

不登校の子にデジタル制限は必要か?禁止するリスク3つ

不登校の子にデジタル制限は必要か?禁止するリスク3つ
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キャリア15年で1000人以上の子どもたちを復学に導いた復学支援専門家。 復学率は現在もなお100%。 心理師として唯一の国家資格である公認心理師で、出版した著書はいずれも初版完売。 現在、エンカレッジの他にも家庭教育推進協会の代表理事と教育支援センターのコーディネーターも兼任。

不登校とゲーム・スマホ。

これらの関連が強いことは、たくさんの親御さんが体感されているのではないでしょうか。

不登校からゲーム依存になることもあれば、ゲーム依存から昼夜逆転して不登校になるケースもあります。そのため、不登校になると親御さんは「デジタル制限をすることで再登校出来るのでは」と思う方が多いのですが、既に依存症になっている場合は一筋縄では行かないことも多いです。

今まで1000人以上の不登校の子たちをサポートしてきましたが、ここ数年の子ども達のデジタル依存は深刻です。中にはゲームやSNSが引き金で家族仲に亀裂が入ることもあるため、デジタル制限をする場合は細心の注意が必要と言えるでしょう。

今回は不登校の子にはそもそもデジタル制限をすべきなのか、デジタル制限のメリットやデメリット、デジタル制限した場合のリスクについてお伝えしたいと思います。

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不登校の子にデジタル制限は必要か?

タブレットゲームをする不登校の小学生

今の世の中、デジタル機器は生活必需品と言っても過言ではありません。

習い事や学習塾に通うために小学校低学年からスマホを持たせる家庭もあり、子どもの生活の中にもデジタル機器が当たり前にある状態です。「我が子には出来るだけスマホを持たせたくない」と思っているご家庭でも、お友だちが持っているから仕方なく…というケースも多いでしょう。

購入当初はゲーム利用ルールを決めたり、使う場所を限定したりとあれこれ対策を立てていたのに、次第にルールが曖昧化して親を悩ませるケースも少なくありません。

まさに「諸刃の剣」とも言えるゲーム、スマホ等のデジタル機器。「いっそ無くしてしまえばいい」と思う親御さんも多いですが、不登校の子にとってデジタル制限をすることは必要なときもあるし、良くないときもあると私は考えています。

どういうケースで必要/不要なのか、以下で私の考えをお伝えしますね。

デジタル制限が必要な場合

不登校中のゲーム依存

以下のような子の場合、不登校中にデジタル制限を行う効果はあると思います。

  • なんとなく学校に行っていない
  • ゲーム・SNSによって昼夜逆転気味

「なんとなくやる気がなくて学校に行っていない」ような場合は、自宅が心地良すぎて外に出たくなくなっている可能性があります。

「不登校で家にいると、ゲームがたくさんできて楽しい」という誤学習をしていないか確認し、もし自宅が楽しすぎる場合はみんなが学校に行っている時間は《自宅を居心地の良すぎる状態にしない》工夫をしてみましょう。ゲームやSNSのストップ、Amazon Primeなどのテレビ視聴制限は、自宅を居心地よくしないための効果的な方法と言えます。

誤学習…自分にとって都合が良いように解釈した誤った学び。「スーパーで泣き叫んだらお菓子を買ってもらえた」など

また、生活リズムを整え心身を健康に保つことは重要な不登校対策法です。

近年は起立性調節障害の子が増えていますが、不登校で昼夜逆転をきっかけに起立性調節障害に移行するケースもあります。

今までも何人も起立性調節障害の子たちを見てきましたが、頭痛やめまいに悩まされている姿は本当に辛そうで見ているこちらも辛くなるほどで、やはり昼夜逆転や起立性調節障害になる前に予防できるならしてあげた方が良いと思うのです。

ゲームやスマホをきっかけに昼夜逆転しそうな場合は、何とか生活リズムをキープするため、夜のゲーム・スマホを制限するなども必要だと思います。

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デジタル制限が不要な場合

通信教育

以下のような子の場合、不登校中にデジタル制限を行うとリスクがあるため慎重に検討する方が良いでしょう。

  • いじめ等で学校生活に辛くショックなことがあり、心の回復途中
  • 常に端末を手にしているほど、スマホやゲームに依存している

もしお子さんにとってとても辛いことがあって、心を回復させるために一時的に現実逃避する手段としてゲームをしているような場合は、ゲームをやらせてあげた方が良いです。いじめなどで心理的負荷が大きい場合は時間あるとすぐに辛かったこと、嫌だったことを思いだしてしまうので意図的に考えないようにするというのも実はとても大切なのです。

また、とにかくゲームが生きがいになってしまっている場合、程度にもよりますが依存症になっている可能性があります。

依存症状態だと急に取り上げたり制限をするとパニックになるケースも多く、急に自宅を飛び出したり、親に暴力をふるうなどもあり得ます。そのため、急にデジタル制限をせずに慎重に段階を踏んでゲーム時間を減らしていける方法を考えましょう。

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不登校中のデジタル制限のリスク

デジタル制限で気を付けるべきリスク

現代の子どものデジタル依存は根深いです。そのため、不登校という不安定な時期にデジタル制限することが子どもの精神に悪い影響を与えないかと心配される親御さんも多いです。

実際、無理にデジタル制限を実施したり、デジタル制限の方法がその子に合っていないことで状況が悪化するご家庭もあります。

デジタル制限をすることのリスクと対処法について、以下でまとめていきますね。

【デジタル制限のリスク①】親との信頼関係が崩れる

不登校の親

子どもにとってゲームやSNSが生きがいとなっている場合、急に取り上げようとすると子どもは「親は私の生きがいを奪う敵」と思ってしまう可能性があります。

そのため、デジタル制限をするにしても「あなたのことを心配しているから」「辛いのはわかってるから、一緒に頑張ろう」という親の愛情が伝わる形で制限しないといけません。

上野
上野
「あなたのためにゲームを制限するのよ」等、簡単に説明しただけ(対話のない押し付け)では「うるせぇババア!」のように反発されやすいです。特にゲームが嫌いな親御さんの場合はあなたのためと言いつつ自分が嫌いだからという空気が出てしまいますので。「ゲーム時間は1日何時間が良いと思う?」といった対話をして、お互いに意見交換してお互いに納得できるラインを擦り合わせていくことが、時間はかかりますが大事です。

不登校は親も疲れが溜まります。そんななか、お子さんに反抗されるとやるせない気持ちになったり、行き場のない怒りや葛藤を抱えられるかと思います。

しかし、お子さんの不登校を解決できるのは、親御さんだけなのです。たとえ不登校の原因が親でなくても、再登校させてあげるには親御さんの力が必要なのです。そのため、親子の信頼関係が崩れることはつまり、不登校を長引かせることにもなります。

そのため、デジタル制限をする際は家庭内の信頼関係を第一に考えながら行うべきです。

【デジタル制限のリスク②】生きがいを失うショック

ゲームをする不登校の子ども

近年流行りのオンラインゲームでは、チーム戦で仲間意識が強かったり、ゲーム内に役職があると「僕が頑張らないと!」という責任感でゲームにのめり込んでいることもあります。

ゲーム内の人間関係で、頑張った分認めてもらえたり、自分のスキルや知識で活躍できたり、頼りにされたり…その子にとって「人の役に立てている自分」を実感できている時間かもしれません。

そのような状況下でゲーム・SNSを取り上げることは即ち「友だち・仲間を奪うこと」「人に認められている自分を捨てること」になりかねません。これは子どもは全力で反抗します。

ゲーム内でこういった人間関係が既に構築されている場合は、デジタル制限がお子さんのアイデンティティにまで関わるため、デジタル制限を安易にせず慎重に検討する必要があります。

【デジタル制限のリスク③】自暴自棄になる

デジタル制限で不登校の子が自暴自棄にならないよう注意

デジタル制限を行うと、子どもは急に生きがいを失ったような気分になります。このように心の拠り所を無くすことを心理学では「対象喪失」と呼び、ボウルビィの悲哀の4段階のプロセスを経て回復していくことが多いです。

ボウルビィの悲哀の4段階についてはこちらの記事で詳しく書いていますが、回復の過程でも情緒不安定・自暴自棄になる等が見られます。情緒不安定・自暴自棄の時期を経て、心が回復していくとされています。

しかし、この情緒不安定や自暴自棄も、「状況が悪化している場合の自暴自棄」なのか、「回復過程の自暴自棄」なのかはなかなか判別がつきにくいです。そのため、迷ったり不安がある際は心理の専門家に相談するのが安心かと思います。

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不登校中のデジタル制限のメリット

不登校中のデジタル制限

不登校中のデジタル制限にはリスクがあることをお伝えしましたが、しかしデジタル制限をするメリットももちろんあります。

そのため、デジタル制限をするかの検討の際は、その子にとってのメリットとデメリット、そしてリスクを加味した上での判断になります。

デジタル制限のメリットについて、改めて確認していきましょう。

【デジタル制限のメリット①】家が「退屈な場所」になる

不登校の子どもの部屋

自宅が心地いいことはとても大切なことです。

学校で疲れて帰って、自宅で伸び伸びしておいしいごはんを食べて「明日もまた頑張ろう!」と思えるのが本来は理想です。しかし、不登校を経験した子にとって居心地が良すぎる自宅は逆効果になることがあります。

例えば「学校よりも自宅が楽しいから」「家にいるとゲームができるから」という理由で不登校になる場合は、自宅を居心地が良すぎない環境にする必要があります。家に居ても暇という状態を作れば、「今の状態を変えたい」と子どもが思うきっかけになります。「今の環境が楽でいい」と思っていたらどんどん不登校から抜け出せなくなってしまいます。デジタル機器を使えないことは、自宅をつまらなくする1つの方法です。

「学校に行くと色々なことがあるけど家に居ても退屈だし」「なんだかんだ学校に行けば堂々と外に出れるしゲームもできるし、家よりはまし」とこの家より学校に行った方が「まし」と思ってもらうことが重要なのです。

もちろん、学校が楽しいところであるに越したことはないですし、楽しく通ってほしいと思う気持ちもわかります。

しかし、不登校になる子は基本的には学校が楽しいとは思えていません。(楽しかったら休まないので)なので親としても「学校は楽しいところだよ」「お母さんは学校楽しくてしかたなかったけど」「行ったら楽しいよ」と伝えるのはやめましょう。プレッシャーを感じて辛くなりますし、「行ってもお母さん言うように楽しくない」とギャップを感じて辛くなりますので。なので、まずは「学校に行く方が家に居るよりもまし」という状況を作るようにしましょう。

ちなみに同様の考え方で、不登校の日の昼食は簡素なものが良いです。

「家にいると給食より豪華なものが食べられる」「好きなものしか出てこない家のごはんを食べたい」と思われると学校に行きたくなくなるからです。「学校を休んだから今日もうどんか~また給食が食べたいな」と思うくらいが登校意欲に繋がります。

【デジタル制限のメリット②】生活リズムが整う

不登校中のデジタル制限

デジタル制限を行うと、昼夜逆転を改善できることもメリットです。

ゲームやスマホ画面を見ると脳内でドーパミンが放出され、興奮状態になります。すると、眠気が吹っ飛んでしまい、夜更かしになり、それが続くと昼夜逆転になることはたくさんの方がご存じかと思います。

そのため、昼夜逆転を防ぐためにデジタル制限をすることは有効な方法です。

「不登校の子にデジタル制限は必要か?禁止するリスク」まとめ

不登校中のデジタル制限

iPhoneの生みの親・Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏は自分の子ども達のスクリーンタイムを制限していましたし、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も、自分の子にスマホを持たせたのは14歳からです。

つまり、スマホやPCを作っている人たちは、より深くデジタル機器やアプリの依存性や弊害をわかっていたからこそ、自分の子どもから遠ざけていたのではないでしょうか。

そう思うと、私たちも子どもにはある程度デジタル制限する方が良い気がしてきますよね。しかし、現実的にすでに利用して便利になったものをなくすというのは難しいです。

車も今はナビなしでは目的地に行けませんよね。私の時代は車の助手席には大きな地図を置いて調べながら運転していました。便利になりましたがナビを使うことで道を覚えなくなりました。スマホで色々調べるのが早くなりましたが漢字はどんどん書けなくなりました(笑)

だからといって地図で調べる生活、辞書で漢字を調べる生活には戻れませんよね。大切なのはどのように向き合っていくか、そして日々親子で一緒にアップデートしていくかです。

最近は、ゲーム=悪 YouTube=悪 と悪い影響しかないと考えてしまう親御さんも多く、そのために無理やりでも制限させた方がいいと思われる方もいます。

しかし、既にゲーム・スマホ依存症になってしまっている子に厳しいデジタル制限をすることはかなりの荒療治でリスクも伴います。

例えば「不登校の日はゲーム一切禁止」というルールも、効果がある子と逆効果になる子がいるため、マニュアルで一辺倒な対応ではなく「今その子はどのような心理状況か」「そもそもの性格や気質」「今までどのような家庭内対応だったか(過保護・過干渉があったか)」等の状況に応じた対応が肝心です。

デジタル制限の仕方を誤って親子の信頼関係が崩れてしまうと、関係構築に時間がかかってしまい、その結果再登校するのも時間を要してしまいます。デジタル=悪ではなく、どのように向き合って利用していくかを考えていきましょう。

とはいえ、電子機器に関してはどのように制限したらいいのか、どこまで許していいのか、不登校の状況も重なると正直とても難しく判断も迷うと思います。そのような場合は1人で考えるのではなく子どものデジタル制限に詳しい心理の専門家に相談したり、エンカレッジのような不登校の専門家にデジタルのことも相談するというのがおすすめです。不登校の状況ではまたデジタルに対しての向き合い方も全然違ってきますので。

もしデジタル制限についてお悩みがある方は、無料オリエンテーションでもご相談を承っておりますのでご連絡ください。

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監修者:上野 剛
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