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「不登校」という言葉は1つでも、その状況はご家庭によって様々です。
毎日午後から登校する子、お母さんが授業中にいてくれれば教室で授業を受けられる子、算数だけ参加できない子、週2回程度は朝から登校できる子など…本当に色々なケースがあります。
そんな中で、最近「完全不登校」という言葉が多く使われるようになってきたと感じます。
完全不登校とはどのような状態なのか、親はどのように対応するといいのかについて、今回はまとめて行きたいと思います。
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↓不登校の解決に必要な対応をまとめた記事はこちら↓
完全不登校と長期不登校の違い
不登校には色々なかたちがあります。
保健室登校、母子登校、五月雨登校、別室登校…色々な不登校があるなかで「完全不登校」や「長期不登校」は何が違うのでしょうか。
まずは言葉から整理していきましょう。
完全不登校とは
近年、「完全不登校」という表現を見たり聞いたりするようになりました。
最初私は「完全不登校?」と違和感があったのですが、どうやら別室登校や保健室登校、母子登校や放課後登校ではなく学校に全く行かなくなってしまった状態を完全不登校と表現されているようです。
専門家が完全不登校と表現しているというよりは、親御さんが状態を表現する方法として使っている感じです。
長期不登校とは
一方で「長期不登校」とは、朝から夕方まで登校できない状態が長期的に続いた状態だと思っています。
私は「長期不登校」と表現していましたが、長期不登校でも別室登校をしている場合もありますし、放課後登校をしている場合もあります。長期不登校では完全に行っていないかどうかがわかりにくいので完全不登校という表現を親御さんがされているのかなと思いました。
といいますのも、エンカレッジの無料オリエンテーション(初回の無料でお子さんのアセスメントを行う電話カウンセリング)でお子さんの状態をお聞きするときに、「5月から完全不登校です」とか「8月までは別室登校していましたが、そこから半年間は完全不登校です」といった感じで言われることが多くなってきたからです。
また初回の相談メールでも「3学期から完全不登校です」とか「コロナ休校明けの分散登校までは五月雨でしたが、そこから完全不登校です」といった表現が増えてきました。
もちろん、「完全に不登校です」という表現の方もいます。全く学校に行っていない状態を完全不登校と表現するようになってきたというだけなので、表現の仕方はどうあれ「完全不登校」「長期不登校」ではどうするべきなのかという大切なところを解説していきたいと思います。
完全不登校かつ長期不登校の対応ポイント
完全不登校が長期化してしまったケースは、不登校対応のなかでも対応が難しいです。
人間は脳の仕組みに恒常性(ホメオスタシス)があるので、習慣化してしまった期間が長ければ長いほど、その習慣を脱するのが大変なのです。学校に行かない期間が長ければ長いほど、学校に行くのが怖くなりますし、行きたくない気持ちが大きくなります。
不登校の中でも対応が難しい、この「完全不登校が長期化した」というケースにおいて、大事な考え方をお伝えしていきますね。
【完全長期不登校の対応①】対応の方向性を決める
まず必要なのは、親御さんがお子さんの教育方針や方向性を決めるということです。
現在はフリースクールや放課後デイサービスのようなサポート体制が拡充されてきていますし、オンライン教材なども多種多様で選べるようになってきました。なので、学校以外でも勉強しようと思えばできる時代になったと言えるでしょう。
「学校以外で勉強できる時代に、登校にこだわるべきなのか?」をまず親御さんが自問自答してください。
そこで「うちの子はフリースクールが合っているかも」と思うのならばフリースクールで良いと思いますし、自宅学習で頑張りたいと思うなら自宅学習でも良いと思うのです。私は復学支援専門家ではありますが、その子が本当にその道で良いと思えるなら、フリースクールでも応援したいと思っています。
しかし「やっぱり学校に行ってほしい」「人間関係も含めて色々な経験を積んでほしい」と思うのならば、学校に戻れる道を探りたいですよね。
大切なのは、フリースクールなども含めて検討して「学校に行くべきか?」の答えや意志を親御さん自身がわかっていることです。
その他、以下のようなことも親として方針を考えておいてもらいたいです。
- 朝からの学校復帰を目指すのか
- スモールステップで別室登校や昼からの登校から進めるのか、あくまで朝から夕方までの登校にこだわるのか
- 勉強の成績が良ければ、学校は行かなくてもいいと思うか
- フリースクールなどの学校以外の選択肢を視野に入れるのか
- 心療内科や児童精神科などの心理療法はどうするか、服薬は許容するか など
【完全長期不登校の対応②】父母で意見を一致する
上記①で親御さんの対応ポイントがはっきりしたら、その意見が父母で一致するかもしっかり擦り合わせしておきましょう。
最近はお父さんの育児参加が増えてきたとはいえ、まだまだ不登校対応はお母さん中心のことが多いです。無料オリエンテーションにご連絡頂くのも、まだまだお母さんが圧倒的に多いです。
そのようなときに良くあるのが、お母さんとお父さんで意見が合わないということです。
お父さんが「フリースクールでもいいんじゃない?」と言っているなかでお母さんが「頑張って学校行こう」と言っても、子どもは混乱してしまいますし、不安が増大してしまいます。やはり、父母は一枚岩で子どもに接することが非常に大事なのです。
不登校方針もですが、以下のような日常生活の細々としたことも父母で一致させないと、お子さんが混乱して不登校が長引きやすいです。
- 学校に行けなかった日は、お菓子を食べていいのか
- ゲーム・テレビは夜何時までできるか
なので、お父さんとお母さんでまずは意見を一致させ、日常生活も一貫性を持って対応できる状態にしておきましょう。
【完全長期不登校の対応③】一貫性のある対応をする
よく親御さんが失敗しがちな不登校対応は、目先のことから始めてしまうことです。
例えば勉強。
皆さん勉強の遅れがないように進研ゼミやスタディサプリをされます。「勉強を取り戻すことができれば学校にも行きやすくなるのではないか」と考えるからです。でも多くが失敗します。
なぜかと言うと、学校に行くという意志がしっかり固まっていないのに「とりあえず勉強だけする」というのはやる気にならないからです。
たとえできたとしても、学校に行くとなれば学校だけでも負担が大きくなるので、進研ゼミやスタディサプリなどの両立が難しくなりどちらも中途半端になることが多いです。
塾やピアノ、サッカーなど習い事だけ行けていた子も学校という負担がないからできていたので、学校との両立となると習い事が負担になってしまい、どちらも中途半端なまま行けなくなってしまいます。
このようなことが起こる理由は、親御さんの思考と行動の軸がぶれてしまっているからです。
「フリースクールじゃなくて、元々いた学校に戻れるようにする」と不登校対応の方向性も決めて父母で意見も一致したはずなのに、実際にやっていることは「自宅学習」であり、不登校の延長になってしまっていることに気付かない親御さんは多いです。
なので、「学校に戻る」という方向性を決めたのであれば、それに沿った行動ができているかを今一度見直してみてください。
完全不登校のAくん。
お母さんは「とりあえず勉強は遅れないように進研ゼミだけでもさせているのですが、全然やる気がなくて」と心配されていました。
しかし、私はAくんは明確なゴールもないまま、ただ「勉強しなさい」と言われているようなもので、それはAくんに酷な話でやる気がないのは当然だと感じていました。
逆に、方向性が決まり家族の意思統一ができれば、きっと自分から勉強もするようになるのではとも感じました。そこで私は、「子どもは学校に行くというしっかりとした意思と目標が決まれば勉強をします。それは行ったときに自分が困るという明確な理由があるからです」と伝えました。
そこで、カウンセラーと家族と子どもとで学校のことについて具体的に話し合って、「このままでは勉強も遅れていくし不安だから学校に行く」と子どもが決めて、家族とカウンセラーで協力して学校復帰に向けて頑張るという意思統一と具体的な登校プランを決めました。
するとAくんのお母さんが「子どもが自分から勉強をするようになりました」と喜ばれていました。
しっかりゴールを決めて、必要性を感じれば子どもは勉強するのです。
【完全長期不登校の対応④】しっかりとしたアセスメント(分析)
不登校の親御さんが「この不登校対応で合っているだろうか」と迷うのは、現状分析が十分ではないからかもしれません。
方向性決定と意思統一をするためには、状況の分析が不可欠です。
アセスメントとは心理学では分析や見立てと言いますが、状況を客観的に分析して全体を把握してその子が今どのような状況でどのような状態なのかを見立る必要があります。
「なぜうちの子はこんなにゲームに執着するのか?」がわからずにただゲームを取り上げてしまうと、暴言を吐いたり家具を破壊して暴れたりしたときにどうしていいかわからなくなりますが、ゲーム依存になった理由をある程度分析できていれば、子どもの心理を踏まえた対応が取れるようになります。
親御さんがお子さんに向けたアセスメント(分析)をできるのが一番いいのですが、どうしても主観が入ってしまい、希望的観測で「行けば大丈夫だと思うんですよ」とか、「行きたいはずなんですよ、だから明日は水曜日だから時間も短いし行ってみたらと言うのですが毛布にくるまってしまうんです」といった強引なアプローチをしてしまったりします。
まずは目先のアプローチではなく、しっかりとした方向性決定と家族の意思統一をしなければいけません。そのためにもしっかりとしたアセスメントをしましょう。
もし、専門家のアセスメントをご希望であれば、エンカレッジでは無料オリエンテーションで初回のみですがアセスメントさせて頂いていますので、ご相談ください。
【完全長期不登校の対応⑤】親が元気になる
完全不登校が長期化したとき、お子さんが辛いのはもちろんですが、親御さんもかなりの心労や疲労が溜まっているかと思います。エンカレッジにご相談頂く親御さんも、かなり落ち込んでいたり、体調を崩されている方も少なくありません。
お子さん思いの親御さんほどご自分を責めていたり、不安も強く感じておられることも多いですが、お子さんは口にしなくても親御さんの不安感を肌でひしひしと感じていることも多いので、不登校改善のためにもまずは親御さんが元気になりましょう。
現代は核家族化が進み、子育て方法を知らないままに大人になり子どもが生まれ育児に奮闘される親御さんが多いです。「頼りになるのはネット情報だけ」という方も多いのではないでしょうか。
ネットは便利ですが、誰が書いたかわからない情報で、正しい情報かどうかも、自分に合っているかもわからないですよね。時には傷つくような書き込みを見ることもあるでしょう。そのような情報で右往左往してしまうと、親御さんの精神が消耗してしまいます。
色々情報を調べるのも大事ですが、余計な情報は見ないようにしましょう!
そして、心苦しいと感じても自分自身の時間を作り、自分自身もいたわり、よく寝る。
お子さんの付き添いなどもできるだけ他の人に頼んでみる、子どもが大きければ子ども1人で留守番させて映画を見に行ったり友だちとランチに行く、ご褒美スイーツやコスメ、時短家電を買ってみる等もおすすめです。
【完全長期不登校の対応⑥】相談先を吟味する
完全不登校が長引いているとき、家族だけでの対応に限界を感じるときもあると思います。そのようなときは、早く第三者に相談することが大事です。
子どもは親に対してはどうしても甘えが出てしまいます。そのため、第三者という立場を使った介入が非常に有効なのです。
不登校の相談先は学校の担任やスクールカウンセラー、児童精神科やクリニック、自治体の相談窓口や民間のサポートなど色々あります。まずはご家庭の不登校対応方針に合った相談先を見つけましょう。
そして完全不登校が長期化しているケースは、不登校対応のなかでも難しいため、やはり不登校支援の専門家に相談するのが早道かと思います。
- 学校の先生 → 学級運営の専門家
- 保健室の先生 → 体調不良やケガのケアの専門家
- スクールカウンセラー(SC)→ 子ども達の心の悩み全般に寄り添う専門家
- 復学支援 → 再び登校するエネルギーを引き出す学校復帰の専門家
完全不登校から学校以外の選択肢を視野に考える場合は、教育支援センターやフリースクールに相談するのもいいと思います。
私は教育支援センターのアドバイザーもしていますが、学校復帰だけにこだわらず、子ども達の次のステップに向けたサポートをしています。
親御さんの中には学校不振で「もう学校に通わせたくない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。子どもの思いや親御さんの思いを尊重し、家族に寄り添ったサポートも行っています。
ただ、学校復帰を家族として目指すのであればやはり、学校復帰の専門家に相談することをおすすめします。
「完全不登校・長期不登校の親の対応法6つを復学支援専門家が解説」まとめ
完全不登校や長期不登校の状態になると、どうしてたらいいのか、何が正しいのか、日々時間だけが過ぎていき、気持ちばかり焦って家族が衝突し、お互いに傷つき落ち込んでしまいます。
心配で不安な日々を過ごされていると思いますが、まずはしっかりと今やるべきことを見直してみましょう。
今回は完全不登校が長期化したときの対応ポイントをまとめましたが、大事なのは1人で悩まないことです。
人間は1人で悩んでいるとつい悪い方を想像してしまいます。それは防衛本能で「リスクを予測しておいて、後で対応できるようにしよう」という人間の脳の性質なのですが、1人でいるとどんどん辛くなってしまうのでそのスパイラルを断つように行動するのが重要です。
不登校の問題は周囲に相談しにくく孤独になりがちです。そのため、1人で抱えず専門家と相談しながら一緒に進めていきましょう。もしエンカレッジにご相談されたい場合は、無料オリエンテーションをご活用くださいね。