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不登校が長くなってくると「このまま大人になったらどうしよう」と親御さんは不安で仕方ないと思います。
「何とかしてあげたい」「これからどうなるのだろう」と心配になる親御さんほど、きっと今までお子さんを大事に育ててこられたのでしょう。今できることを探したい気持ちもとても良くわかります。
そこで今回は、不登校の子が大人になったらどうなるのかについての統計や復学支援専門家の意見をお伝えするとともに、再登校の質を上げる方法についてまとめていきたいと思います。
私たち不登校支援グループエンカレッジでは、今まで1000人以上の子どもたちの復学をサポートし、設立17年の現在も復学率は100%を維持しています。不登校に悩む方向けに無料のLINEやメルマガの発信もしておりますのでご活用ください。
不登校のまま大人になったらどうなる?
「不登校のまま大人になったらどうなる?」の質問ですが、私の結論は「不登校でも多くの子が復帰できている、でも再登校の質は大事」ということです。
と言うのも、不登校を経験したほとんどの子は進学か就業をしていることが平成23年の文部科学省の「不登校の実態調査」という統計データからわかっているからです。そのため、今不登校で将来が不安な親御さんも、まずは安心してくださいね。
この平成23年の「不登校の実態調査」とは、平成18年度に不登校だった中学3年生の生徒が、5年後の20歳時点でどのような進路を取ったかの大規模な追跡調査です。その調査報告書が平成26年に公表されているので、そのデータを以下で詳しく見てみましょう。
8割以上が進学か就業をしている
文部科学省の平成23年度の統計によると、中学3年生時点で不登校だった子どもの20歳時点の進路は以下の通りです。
- 就業のみ 34.5%
- 就学のみ 27.8%
- 就学・就業 19.6%
- 非就学・非就業18.1%
非就学・非就業が18%なので、8割以上が就業か就学をしていることがわかりますね。
つまり、一度不登校を経験しても、20歳時点で8割以上の子が社会復帰出来ているのです。
年々不登校の子が社会復帰しやすくなっている
実はこの文部科学省の「不登校の実態調査」ですが、平成23年だけではなく、平成10年にも調査されています。
【1回目調査】
平成5年に中学3年生だった子どもを平成10年にアンケート・ヒアリング調査し、
平成13年9月に発表
【2回目調査】
平成18年に中学3年生だった子どもを平成23年にアンケート・ヒアリング調査
し、平成26年7月に発表
この2つの調査結果を見ていくと、平成10年と平成23年で、不登校経験者の進路状況の変化がわかります。
- 高校進学率が65.3%から85.1%に増加
- 高校中退率が37.9%から14.0%に低下
- 大学・短大・高専への就学割合が8.5%から22.8%に増加
- 就学も就業もしていない人数が22.8%から18.1%に減少
このデータから、不登校の子の進学率が年々高くなっていることが読み取れますね。そして、高校中退や、20歳時点で就学・就業していない人数も減ってきていることを考えると、不登校の子が社会復帰しやすい環境が少しずつではありますが整ってきているように思います。
大人になりたくない子どもが増加中
私は20年以上に渡って不登校の子を支援してきたので、この20年の子ども達のリアルな変化を見てきました。そして最近気になっているのが「大人になりたくない」という子どもが増えていることです。
エンカレッジでは親御さんに会話ノートを記録して頂きますが、これは心理学の観察法というカウンセリング技法で、これで日々クライアントさんの家庭内の会話を分析・添削をしています。
そのなかで、近年子ども達から以下のような言葉をよく見かけるようになりました。
- 「大人になりたくないな~」
- 「大人って大変そう…」
- 「大人になるのが心配」
実際にNHK放送文化研究所 『中学生・高校生の生活と意識調査』(平成15年)では、約半数の中高生が「大人になりたくない」と回答しています。そして大人になりたくない理由は以下の通りになっています。
1位「子どもの方が楽だから」
2位「大人になるのが何となく不安だから」
3位「大人になって仕事や家のことをやっていく自信がないから」
4位「周りの大人を見ているとずるい人や自分勝手な人が多いから」
この「大人になりたくない理由」を見ると、「今の生活が楽でいい」と感じている子が多いように感じられます。自立したくない、受け身でいるとラク、家事や身の回りのことをやってもらいたい…そんな考えになっているのではないでしょうか。
そのため、不登校かどうかに関わらず、「今の生活が楽でいい」と考える子が多いことを大人は念頭に置いて日々接することが大事だと思うのです。
大人になったときに生きる「再登校の質」のポイント
一度不登校を経験しても、多くの子はその後進学や就職をしていきます。しかし「進学や就職をした」という結果だけ見るのではなく、その再登校の質に目を向けてほしいのです。
不登校になった後、どのような再登校をするかでその子の将来は大きく左右されます。
良くない再登校は、不登校になった原因がわからないまま無理やり学校に連れていかれたり、モノやおもちゃで登校をつられたり、その子の苦手なものを親や先生が悉く排除するような登校です。
これではその子に自信や対応力がつかず、せっかく就職しても職を転々としたり、ここぞと言うときに頑張れなかったり、対人関係で悩んだりすることにも繋がりかねません。
一方で良い再登校とは、以下のような状態だと思っています。
- 「再登校は怖かったけど、自分で乗り越えられた!」と自信がつく
- 登校が嫌になるくらい算数がイヤだったけど、頑張ったら案外できた(自己効力感が育つ)
- 担任の先生が怖くて苦手だったけど、徐々に慣れてきた(対応力がつく)
- マラソンが嫌いだったけど、なんとか頑張った(忍耐力がつく) など
辛いこと・難しいことがあっても自分なりに解決できたり、逃げずに向き合って自信がついていくような質のいい再登校は、生涯に渡ってその子の力になります。
このような質のいい再登校をするためのポイントを以下でまとめていきますね。
甘えはほどほどに
学校生活で心底疲れてしまったときや、いじめなどの深刻な理由がある場合はとにかく休息が大事です。家庭と言う《安全地帯》に身を委ねて、心のエネルギーが溜まるまで学校に行かずにゆっくり休むべきです。
一方で、なんとなく宿題が嫌で不登校になったケースなど、決定的な理由がないのに学校に行かない場合は登校した方がその子のためになることが多いです。
スクールカウンセラーなどが良く言うセリフに
「今は好きなことをさせてあげましょう」
「甘えさせてあげましょう」
「心のエネルギーが溜まるまで待ちましょう」
がありますが、これは深刻な不登校理由がある子へは良いですが、なんとなく不登校になった子へは言うべきではありません。なぜなら「今の方が楽だから登校したくない」となるからです。
そして家で過ごすことが長くなると、そのうちに「自分は学校に行かずになんてダメな子なんだ」と自責するようになり、精神不安定になって再登校のハードルが上がります。好きなだけ甘えさせてあげることは、後々お子さんが自信や自己効力感を失うことに繋がる可能性があるのです。
そのため、お子さんの年齢や状況をしっかり観察したうえで、必要以上に甘えさせることは避けた方が良いです。
自己効力感を育てる
「大人になるのが何となく不安だから」「大人になって仕事や家のことをやっていく自信がないから」という子どもの気持ちは、自己効力感の低さが原因ではないでしょうか。
自己効力感とは「僕も頑張ったらできるんだ」「自分はこの壁も乗り越えられるはず」と自分がこの分野やこの場所では自分の力を発揮して適応できると思えることです。そういった自分ができると思えることで、自分自身を肯定する自己肯定感も底上げされていきます。
自己効力感が低いまま社会に出ると、自信も無く、周りに助けてもらわないと不安で、周りから褒めてもらわないと気が済まなかったりします。
そのため、子どものうちに自力で考えて行動する力を身に着け、「頑張ったらできた!」という成功体験を積むことが大事です。
子ども優位にしない
大人になりたくない理由の4位は「周りの大人を見ているとずるい人や自分勝手な人が多いから」ですが、会話ノートでも「お父さんだけやってもらってズルい」という会話が多くみられます。
これは「子どもが大人と平等の権利がある」という意識があるからと感じます。
子どもの権利が大切なのはわかりますが、それを尊重しすぎて、親だけでなく先生も含めた大人自体に威厳がなくなり、大人に魅力を感じなくなっているのではないでしょうか。
- 「欲しい!」と言われたらつい買ってしまう
- 身の回りのことは親が先回りでやってあげる
- 夕食や休日の外食メニューも子どもが決める
- 宿題をしてこなくても親や先生に怒られない
- 甘えると、親がいつも優しく言いなりになってくれる など
このような子ども優位の生活をしていると、子どもは子どものままで不自由なく暮らせてしまいます。子どもだから今の恵まれた環境が得られていることをその子自身がわかっているので、大人になりたくないのです。
大人の魅力を感じてもらう
最近は、大人になりたいと思えるような大人像を子どもに示せていないように感じます。
景気の悪化で日本は30年間給料が上がっていない。人口ピラミッドの逆三角形で年金の若者の負担が増加。ストレス社会で日々疲れている、ストレスが溜まっている。このようなニュースばかり見ていたら大人になりたくないと思うのも当然です。
子ども上位になっているとどうしても子ども優先になってしまい、色々なニュースなどでも子どもたちが大変ということを報じるので、大人が贅沢をしていることを申し訳ないと思う方も少なくないです。しかし、そういった申し訳なさが子どもたちに大人になりたいと思う気持ちを無くさせていると感じます。
私は大人なので子どもよりも金銭的な贅沢をすることもあります。子どもは素直にズルいといいます。でも私は自分の子どもに「お父さんずるい」と言われたときには、「うらやましいか、大人になったらできるぞ。いいだろ~」と大人になるメリットも伝えるようにしています。
大人は大変なこともあるけれど、その分自分の稼ぎで好きなものを買えること、好きな人と好きな場所に行けること、自分次第で世界がどんどん広がっていくこと…このようなメリットを伝えていくことで、「大人になったら子どもにない権利が得られる」ということを知ってもらいましょう。
「不登校のまま大人になったらどうなる?大人になりたくない子の対応法も」まとめ
子どもが大人を見て、大人になりたくないと思う社会はとても残念に思います。
しかし、不登校の状況では両親は子どものことで意見が合わずケンカばかりになり、お母さんは日々子どもの対応に疲れてとても大人になりたいと思えるように姿を見せられないのは当然です。
でもこのままでは子どもたちは学校にも行けず、親も疲れてギクシャクして子どもに気を遣う姿を日々見せることになるので子どもは大人になりたいと思えるようにはなりません。
まずは、子どもがしっかり学校に行けるようになること。学校がすべてではありませんが何か自分の居場所と思えるような場所、目標をもって頑張っていけるような場所を見つけてあげましょう。そして堂々と親としてかっこいい姿を子どもたちに見せられるようになりましょう。それは可能なので、一緒に学びながら進んでいきましょう。
また社会復帰のデータをみると不登校になったとしても、多くの子は再登校を経て進学や就職等の社会復帰をしているので安心と思ったかもしれません。
しかし、どのように再登校するかが大事なのです。社会復帰してもすぐに会社を辞めてしまう子も実際に多いです。不登校の人数より大人の引きこもりの人数は4倍ほどになります。引きこもりの場合はデータをして表面化していないケースも多いので実際はもっと多いはずです。
自立面の成長を伴う再登校の仕方でない場合は、大人になってから人間関係はじめ生きにくさを感じてしまうかもしれません。大人に保護してもらう快適さを知るあまりに「大人になりたくない、このままでいたい」と感じ、それが引きこもりになる可能性もあります。
登校できればいいということではなく、自立面の成長を伴う再登校、つまり質がとても大切なのです。
このように伝えると悲観的になってしまうかもしれませんが、表面上の安心だけで後から後悔するよりは、実際のリスクも受け入れて後悔しないように対応してほしいのであえて伝えさせていただいています。ですが悲観的になる必要はありません。リスクをしっかり認識して今できることをやっていけばいいのです。
今ころんだとしても、その後、子どもたちにとっては不登校という壁を乗り越えた経験を通じて学んだこと、得られた自信がその後の人生で活きてくるからです。
子どもたちの可能性は大人より無限に広がっています。ぜひ子どもたちの可能性を広げてあげられるような大人に親がなっていきましょう。
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