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お子さんが不登校になると「このまま見守っているだけでいいのだろうか?」「いまの状況は改善しているのだろうか?」と不安に思われる親御さんがとても多いです。
実際にエンカレッジでも「見守るだけで不登校は解決しますか?」というご質問をよくいただくのですが、長年不登校の子どもたちを支援してきた者としては「見守るのが大事なときもあるものの、ただ見守るだけでは解決しないことが多い」と率直にお伝えしています。
むしろ、見守るだけではリスクがある場合も多いです。
大事なのは、お子さんの今の心理状況に合わせて家族が対応すること。
お子さん自身が登校に向けて動き出しそうな気持ち・兆しがあるのかどうか、再登校に向けて動き出すときはどのように対応すべきかについて、復学支援専門家としての見解をご紹介します。
私たち不登校支援グループエンカレッジでは、今まで1000人以上の子どもたちの復学をサポートし、設立17年の現在も復学率は100%を維持しています。不登校に悩む方向けに無料のLINEやメルマガの発信もしておりますのでご活用ください。
不登校の子どもが動き出す時期と兆候は?
諸説ありますが、不登校には大きく分けて3つの時期があると私は考えています。
- 不安定期…不登校になりはじめで、気持ちが安定しない時期
- 膠着期(こうちゃくき)…不登校から1~3週間たって、気持ちが落ち着いてきた時期
- 停滞期…不登校が当たり前化してしまうと共に、自分を責めたりして再度気持ちが不安定になる時期
このなかで、不登校の子どもが復学するのに一番良い時期は「膠着期(こうちゃくき)」です。
以下では、不登校の膠着期とはどのような状況か、具体的にご説明していきますね。
不安定期や停滞期などを詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
膠着期
膠着期とは、不登校開始から1~3週間ほどが経過し、お子さんの気持ちが安定してくる時期です。
不登校になりたての不安定期に気持ちが追い込まれて不安定だったお子さんも、一時的な不登校を認めてもらい、不安な気持ちも家族に受け入れてもらって、ゆったりと家で過ごすうちに、徐々に落ち着きを取り戻していきます。
ポイントは、荒れたりしている不安定期に無理に学校に行かせようとせず十分に気持ちが落ち着くまで登校刺激をしないこと。
まだ気持ちが不安定なときに「そろそろ学校に行ったら?」「勉強が追い付かなくなるよ」といったプレッシャーを与えると、不安な気持ちが大きくなり、状況が悪化します。
お子さんが不安定期から膠着期に移行して、しっかり気持ちが安定してきたことを見極めて登校刺激をすることが、不登校解決の一番の早道です。
膠着期の子どもの兆候例
気持ちが安定してきたお子さんは、自分を客観的に見ることができるようになっていきます。
本来はダメなはずの不登校を認めてもらっている家族への感謝の気持ちが出て「お手伝いしようか?」と声をかけてくれたり、「今のままじゃダメだ」と心のどこかで気づいて学校のことが気になり始めます。
以下のような言動が見られたら、膠着期でお子さんの気持ちが安定してきたサインです。
- 「そろそろ運動会の季節だな~」(自分から学校の話題を話し始める)
- 「〇〇ちゃん、どうしてるかな…?」(友だちが気になる)
- 「洗濯物たたんでおいたよ」(不登校の罪悪感でお手伝いしたり、周囲が見れるようになる) など
お子さんにこういった兆候がある場合は、膠着期で気持ちが安定してきた可能性が高く、登校刺激をするチャンスです。
膠着期以外の子どもの兆候例
膠着期の具体例をご説明しましたが、それでは、膠着期以外のお子さんはどのような状況なのかご説明しましょう。
まず「不安定期」ですが、学校の話題を怖がったり避けたり、家族に暴力や暴言を吐いたり、お友だちの話で感情的になったりする場合はまだ不安定期の可能性が高いので、無理な登校刺激は逆効果です。
次に「停滞期」ですが、「不登校の自分はもうだめだ」と自己嫌悪が強くなってしまったり、何事も無関心で無気力な状態が続く場合は停滞期の可能性が高いです。
こうなってしまっては、家族だけで解決するのは至難の業です。
というのも、停滞期のお子さんは不登校から自信喪失する負のスパイラルに陥っており、見守ったり不登校を続けたりすることがどんどん状況を悪化させかねないためです。
不登校 → 自己嫌悪 → 自信喪失 → 不登校が長期化 → さらに自己嫌悪
不安定期のお子さんには「落ち着くまで見守る」「不登校を認めてゆったり過ごす」という方法が有効ですが、停滞期のお子さんには「見守る」という方法が良いとは思っていません。
なんとか不登校を解決して自分を認められるようになって、徐々に自信をつけてもらい、本来の自分ややりたかったことを思い出して、さらに自信をつけ生きる力を取り戻す良いスパイラルに変化させていくことが大切です。
不登校解決 → 自信がつく → 自己肯定感が高まる → さらに前向きになる
不安定期や停滞期はお子さんも辛いですが、ご家族の心労も相当です。
エンカレッジにも例年たくさんの不安定期・停滞期のご家族からご相談を受けますが、食べ物が喉を通らなくなったり、なかには突発性難聴を患ってしまうほど思い悩んでしまったお母さんもいます。
それほどにお子さんを愛し、心配しているからこその心労でしょう。
1人で悩んでいるときが一番辛いので、「なんとか状況を変えたい」「不登校解決のヒントを知りたい」と思われたらエンカレッジのLINE配信やメルマガ配信をご利用ください。
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動き出すのを促す時期は?
不登校のお子さんの親にとって、お子さんがいつ不登校の状況から動き出すのかは気になりますよね。
お子さんの動き出しを促す「登校刺激」のタイミングはいつが良いのでしょうか。
以下では、登校刺激するのに良いタイミング例をご紹介します。
【動き出す時期①】エネルギーが溜まったとき
お子さんの動き出しを促す時期として、前提は「心のエネルギーが溜まったとき」です。
特にいじめなどをきっかけに不登校になってしまったお子さんは、心に傷を負っていて、学校や友だち、先生に恐怖感や不信感を持っている場合が多いです。
そういった恐怖感や悲しみが落ち着くまで、自宅でゆっくり過ごしましょう。
そして食欲や元気が出てきたり、一歩も外に出なかった子が外に出られるようになってきた利、学校に行ってた時の話や友達の話などし出したら動き出しも近いかもしれません。
【動き出す時期②】気持ちが落ち着いてきたとき
不登校になりたてで気持ちが不安定なときは、家族の話に聞く耳を持たなかったり、暴言・暴力があることもあります。
親が無理やり連れて行こうとすると子どもはそれに反発して今まで言ったことがないようなうるさい!死ね!くそババアなど親としてもビックリするような発言が出てしまったりします。
親もそのような言葉を聞くのはツラいですが、言ってしまった子どもも実はとてもツラいのです。
でも言わなければならないような状況に追い込まれてしまったゆえに出てしまう言葉なので、そのような発言を出させないように不安定な時に無理は刺激は避けましょう。
そのような不安定期にお子さんが登校に向けて動き出すことは少ないです。
不登校になってしばらくして膠着期に移行し、気持ちが落ち着いてきてはじめて動き出しのスタートラインに立ったと言えるでしょう。
【動き出す時期③】学校に再び興味が湧いたとき
学校に再び興味が湧いてきたときは、こども自身が不登校に向けて動き出したサインと捉えることができます。
具体的には、以下のような言動が見られます。
- 「理科の授業だけ行ってみようかな」
(自分から学校の話題を出す) - 「学校は行かないんじゃないよ。行けないんだよ」
(本当は行きたいという気持ちが出てくる) - 「〇〇君は、走るのが速いんだよ」
(学校に行っていたときの友だちの様子を話す)
この時期は不登校解決の最大のチャンスです。
とはいえ、学校に興味はある一方で「しばらく休んじゃったから友だちにどう思われてるかな…」「勉強についていけないはずだ、どうしよう」といった不安もありますよね。
そのため登校前に先生と打ち合わせして、精神的負担を最小限に抑える環境づくりをしたうえで登校刺激をするのが大事です。
エンカレッジで行っている登校前のサポートや環境づくりのポイントについては、こちらにもまとめているので気になる方はチェックしてみてください。
【動き出す時期④】「学校に行かなきゃ」と冷静になれたとき
子どもは、大人が思っている以上に社会のことをわかっています。
学校で学ぶことが将来役に立つこと、自分は学校に行くべきだし、出来ることなら行きたいと子ども自身が思っています。
そのため、何らかの理由で一度不登校になったものの「学校に行かなきゃ」と自分の頭でしっかり考えられる子も多いのです。
冷静に自分の状況を振りかえり、勇気を出して「学校に行きたい」と思えることは素晴らしいと思います。
しかし、長くお休みしてしまったことで不安や心配がふくらんでしまってあと一歩のところで「学校に行くよ」と言えないのもまた現実です。
行きたい気持ちが出てきたのに、あと一歩が踏み出せず不登校が続いてしまうと、「やっぱりダメだ」「どうせ何をしても無駄だ」「生きている価値がない」など停滞期へ進んでしまいます。
大切なのは、動き出すタイミングをしっかりキャッチして、その子にとって復学には何が必要なのかという分析をしっかりし、子どもが登校しやすい環境作り、登校時に気を付けることを学校と家庭で共有し、具体的な登校プログラムを組んで成功体験という結果を出してあげることです。
動き出すのを促す方法は?
不登校からの動き出しを促すために、親御さんとしては「明日は登校するの?お弁当はいるの?」と直接的に聞いたり、場合によっては「そもそもなんで行かないの?」とお説教っぽくなってしまうことも。
しかし、直接的に聞いてしまうと「登校がこわい」といった子ども気持ちを増幅させてしまうことにもなりかねません。
不登校の子どもに動き出しを促す方法について、復学専門家の知見からご説明していきます。
【動き出しの促し方①】家庭内対応を見直す
不登校のお子さんがいるご家庭では、子どもとご家族との関係性や家庭内での対応方法を見直すことがとても重要です。
というのも、子どもが不登校になったのは子ども自身の問題ではなく、日ごろからの家族との関係性に何らかの課題があるパターンが多いためです。
このように不登校をその個人の問題と考えず、家族全体の問題としてとらえるアプローチ方法を「家族療法」と呼びます。
例えば、近年では母親がお子さんを過保護・過干渉に育てたために心理的な母子依存が起き、お子さん自身が1人で何もできない状態になったり、お母さんがいないと不安になり学校でもうまく溶け込めずに不登校になったというケースも多くあります。
こういったケースでは、不登校を根本解決するには、母子依存を改善する必要があるのです。
そのためエンカレッジでは「会話ノート」を使った家庭内会話の添削を丁寧に行っています。
どういうときにどんな言動をご家族がしているのか、家族に何か言われたときにお子さんの反応はどうだったかなどを細かく分析していくことで、不登校を根本解決するヒントが見えてきます。
しかるべき対応方法を行っていった先に、あるべき家族関係が戻ってきて、お子さんが自発的に不登校から動き出す兆しが現れるはずです。
【動き出しの促し方②】家族で話し合う
お子さんが膠着期になり気持ちが安定しており、かつ家族と信頼関係が構築できている場合は、あえて正面から不登校について話し合う機会を持つことも1つの方法です。
決して価値観を押し付けず、お子さんの意見を傾聴する姿勢を大事にしてください。
エンカレッジでは「家族会議」というやり方を推奨しています。
家族会議については、私の著書「今、子どもの不登校で悩んでいるあなたへ」で詳しく解説していますので、興味のある方はそちらの方も参考にしてください。
不登校からの動き出すのを促すときの注意点は?
「はやく不登校を解決したい」と焦るあまり、お子さんの大切な動き出しの時期を見誤ったり、逆効果なことをしてしまう親御さんも多くいらっしゃいます。
ここでは復学支援専門家として、お子さんの動き出しの時期にやってはいけないことや注意点についてお伝えしたいと思います。
不安定期に動き出しを促すのはNG
絶対におすすめしないのは、お子さんが不安定期にいるときに動き出すのを促すということです。
不安定期とは言っても、お子さんのご状況は十人十色です。
不登校になったイライラを家族にぶつける、ただただ部屋に閉じこもって落ち込んでいる、学校や先生の対応に絶望している、ゲームやりすぎを指摘すると逆ギレする、ただただ泣いてしまう…
こういった精神的に不安定なときに「学校に行こう」「勉強が遅れるよ」といった直接的な登校刺激は逆効果ですし、「今日スーパーで〇〇ちゃん見かけたよ」といったお友だちや学校に関わる話題も避けたほうが良いでしょう。
とはいえ、ご家族から見て不安定期と膠着期の見分けがつかない場合もありますよね。
そんなときはカウンセラーや不登校解決の専門家にご相談するのもおすすめです。エンカレッジの無料オリエンテーションでもご相談を承っています。
停滞期になる前に対処すべき
お子さんが膠着期のときに不登校が解決しやすいとお伝えしてきましたが、膠着期を過ぎ、停滞期になってしまうと状況はさらに複雑化します。
というのも、お子さん自身が不登校の自分の将来を悲観したり、自信が失われていくため、負のスパイラルが出来てしまうためです。
停滞期になると、不登校を解決するのは一層難しくなってしまうため、停滞期になる前に対処することがお子さんにとっても、ご家族にとっても負担が少なくて済みます。
あからさまに登校刺激しない
あからさまに動き出すのを促すのも、お子さんにとってはプレッシャーです。
「そろそろ学校に行ったら?」「他の子はちゃんと登校しているのに」などという言葉は、「学校に行きたいけど行けない」と思っている子どもの心を突き刺します。
ご家族にも心を閉ざしてしまう可能性もあるので、あからさまな登校刺激はしないことをおすすめします。
親が焦らない
お子さんが不登校の間はご家族も不安になり「このままで本当に良いのか」と焦りますよね。
しかしその焦りも不安も、お子さんを愛し心配しているからこそ。
しっかり子育てに向き合われているからこその悩みだと思います。
しかし「自分が頑張らなきゃ」「なんとかしなければ…!」と思えば思うほど、焦りが出てしまって、客観的な判断力も鈍ってきて、上手くいかないことも多いです。
「そもそも不登校になる原因は何なのだろう?」「うちの子の今の状況は快方に向かっているの?」など、情報不足が不安につながる場合もあるので、不登校解決の情報収集をしたい方はエンカレッジのLINEやメルマガもご活用ください。
「不登校の子どもが動き出す時期まとめ!様子見がNGな場合を専門家が解説」まとめ
今回は不登校が解決しやすい「動き出し」の時期である膠着期について、復学支援専門家の立場から考えを述べさせていただきました。
膠着期のお子さんの特徴や動き出しを促す時期についてご理解いただけたでしょうか。
大事なのは、膠着期を過ぎる前に何らかの対処をするということです。
自発的に学校に再び興味を持ってきたようなお子さんに対し「ただ見守りましょう」という一律の対応は、せっかくの不登校解決のきっかけを見逃しているようなものだと思います。
その子にとっての膠着期がいつなのか、再び登校してみようと思えるきっかけが何なのか…お子さんの性格や思考方法を理解したうえで、周りの大人が対応方法を考えていきたいですね。