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学校を休み始めたときはツラそうだった子も、学校を休んでしばらく経つと落ち着いて、昼からは元気でゲームや動画、昼寝ばかり…こうなると親は「甘えているだけなのでは?」と感じる方も多いです。
確かに不登校の子でも普段は元気だと兄弟から「ずるい」と言われる子もいますが、それは学校のことを考えないようにしているだけの可能性もあります。
学校を休んで遊んでいると「甘え」「ずるい」と思われてしまいがちですが、ただの甘えではない心理とそう思われてしまう理由を詳しく解説していきます。
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不登校が「甘え」「ずるい」ではない心理とは
不登校の子が家でゲームしたり気ままに過ごしていると、周囲は「甘えなのでは?」「お兄ちゃんばかり学校休んでずるい」といった気持ちになることも多いですよね。
一見気持ちに余裕がありそうに見えるのに、登校はできない…このような状況は、なぜ起こるのでしょうか。
不登校の子どもの心理面から解説していきますね。
甘えではなく実は自己防衛本能
まず理解しないといけないのは、子どもたちはどんなに元気そうに見えても深い部分で不安を抱えているということです。
考えすぎると余計にツラくなるので考えないようにしているのです。だから一見元気そうに見えてもそう振舞っているだけということを理解してあげましょう。
不登校や人間関係のトラブルなど、人は大きなストレスがかかるとそのストレスを回避するために自己防衛本能が働きます。考えないようにすることで自己防衛しているのです。
考えないようにするためにゲームや動画に没頭してしまう場合もあります。また不登校の状態を他人事のように話したりもします。
そのような姿を見ていると、ずるいと感じたり甘えていると思ったりするかもしれませんが、実は甘えているのではなく自己防衛本能なのです。
- ずっと寝ている
- ずっと家にいる
- ずっとゲームしている
- 不登校の自分の状態を他人事のように話す など
虐待やいじめなどでは、そのストレスを記憶から無くしてしまう解離性障害となる場合もあります。
いじめや虐待の伴わない不登校では記憶がなくなるほどの解離性は出にくいですが、多かれ少なかれそのような防衛本能が働いていることは理解してあげましょう。
お手伝いや肩たたきは実は罪悪感の表れ
不登校になっている子でも、普段の会話では夕食のメニューやテレビの話などとても楽しく話せますし、洗濯物をたたんでくれたり、お風呂を沸かしてくれたりと積極的にお手伝いをしてくれます。時には肩たたきまでしてくれます。
「これだけ元気なんだから」と学校の話をすると沈黙して一切話さなくなり、黙ったまま固まってしまう。その姿をみると「都合の悪い時だけ話さなくてずるい」と感じるかもしれません。
お手伝いをしたり肩たたきをしたり、親の機嫌を取ったりする行為は、自分が学校に行っていないことに対して何とか認めてもらいたいという罪悪感の表れなのです。
余裕が出てきたのではなく「必死に今の状況を認めてもらおうとする姿勢」であることを理解してあげましょう。
カウンセラーの「甘えさせてあげましょう」の反動
こちらはカウンセラーの対応によるものですが、不安定期ではなく膠着期(こうちゃくき)に認めすぎる対応をすることによって、子どもが甘えてしまうというものです。
膠着期とは不登校になった子どもが一度休息を取って気持ちが安定する時期のことです。この膠着期の子は適切な対応を取ることで復学しやすいのですが、このタイミングで「学校に行かなくていいよ」と言ってしまうと、実際は行けるのに「登校しなくていいや」という気持ちになってしまいます。
カウンセラーの「甘えさせてあげましょう」という対応により、子どもがどんどん退行し子ども上位になりわがままになっていきます。「こんなの甘えじゃないか」と言いたくなりますが、甘えているのではなく、親とカウンセラーが甘えさせているのです。
子どもは親が甘えさせてくれるのでそれに反応しているだけなのです。子どもなので「甘えていいよ」といえば甘えます。「そんなことしたら自分で何もできなくなるから自分で何でもやるよ、甘えさせないで」という子どもはいませんよね。
このケースは、子どもが悪いのではなく、親やカウンセラーが子の甘えを助長していると言えます。
「甘えている」「ずるい」と思ったときの親の対応
「普段は元気だし、甘えているだけでは?」と思っても、実は自己防衛反応などで心を守っているかもしれないことをお伝えしましたが、では具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。
実際に行うべき親の対応・言動をまとめていきますね。
頭ごなしに叱ってはダメ
不登校の子は一見元気そうに見えても、それは実は、自己防衛本能や罪悪感の表れ、甘えさせられているだけなのでただ甘えているわけではありません。
そこで、「甘えているんじゃない!ちゃんと学校に行きなさい」と頭ごなしに叱るのはNGです。なぜなら、甘えているわけではないからです。
甘えているように見える表面だけをみるのではなく、自己防衛本能で隠している側面を理解し、裏側に隠れている不安や辛さを理解してあげましょう。
話し合えるリレーション(信頼関係)を作る
甘えているとかずるいという目で子どもを見てしまうと、子どもも親を信用してくれません。子どもは意外と周囲からの目線に繊細に気が付いているものです。
深い悲しみを理解してあげ、共感的に受け止めてあげることで子どもたちは心を開いてくれます。
自分を認めてもらうためのお手伝いや気を使った笑顔だけではなく、心の中の悲しさも伝えてくれるようになります。
子どもだけではなく家族でサポートする
甘えていると感じている方の多くは、問題は子どもにあると思っています。だから子どもを責めがちになります。
しかし、問題は子どもだけでなく家族全体にあると考えること(家族療法)が大切です。
家族療法の考え方で考えられるようになると、子どもを非難するだけはなく自分にできることはないかという思考になります。
子どもの辛さをどのように取り除いてあげればいいのか、そのとき親にできることはないのか、担任の先生にお願いできることはないのか、一緒に学校の準備をしてあげることができたら負担が少なくなるのではないか、ということを考えて提案できるようになります。
「甘えているんじゃない、ちゃんと学校に行きなさい」ではなく、「学校に行けない辛さをお母さんも受け止めるから一緒に頑張ろう。お父さんは勉強のサポートをするから一緒に努力していこう」と遅れている部分の把握や不安の把握、それに対する準備、サポートをするための努力と意思があることを伝えた上で初めて学校の話ができるのです。
子どもの問題と考えているうちはどうしても、「甘えているだけだ」「何でこうなったんだ」「お前のしつけがなっていないからだ」「あなたがちゃんと関わってくれないから」と責任転嫁をしてしまいがちです。家族療法の考え方でそれぞれができることを考えていきましょう。
家族療法については書籍『今子どもの不登校で悩んでいるあたなへ』の2章を参考にしてください。
『今子どもの不登校で悩んでいるあなたへ』の内容紹介はこちら(エンカレッジ会社HP)
具体的な内容を家族会議で決める
リレーションを作り、家族療法の考え方でみんなができることをしていこうと話し合えたら後は具体的にどのように進めていくかを家族会議で決めていきます。
担任の先生に家庭訪問してもらったり、友達と一緒に遊んだり、遅れている勉強をどのように進めるのかなどです。
親が勝手に進めても、子どもは嫌がります。しかし、子どもだけに任せていると進まないかもしれません。そのため、家族会議でしっかりお互いが納得できる形を作っていきましょう。
家族会議と書いていますが、お父さん、お母さん、子どもでしっかりとテーブルについて意見を出し合って納得する形で進めていただければ大丈夫です。
話ができない場合は、リレーションが不足しているか、家族会議の進め方がよくないか、そもそも学校の話が家族でできないほどの状態になっているかです。リレーションが不足している場合は、家族療法の考え方で家庭内対応を見直していきましょう。
家族会議の進め方が良くない場合は、本の3章「家族会議でルールを決める」のところを参考にしてください。
家族で話し合っても、そのルールをきちんと守らせることが難しいケースもあります。そういった家族で解決するのが難しい場合は、専門的なアプローチが必要な場合はエンカレッジなどの専門機関を利用することも検討してください。
まとめ
学校を休んでいるのにゲーム三昧だったりお手伝いなどができる状態だったりすると、どうしても「子どもが甘えて登校しない」「子どもが頑張らない」と《子どもに問題がある》と思ってしまいますよね。
しかし、一見元気に見える子どもの行動は自己防衛反応であることも多いです。また、親とカウンセラーが甘えさせるような言動を取ってしまい、子どもの甘えを助長していることもあります。《子どもに問題がある》のではないのです。
家族で不登校を一緒に考え、それぞれが自分にできることをやり、お互いを支えていくことが大切です。それが家族療法の考え方でありいいところでもあります。
はじめての不登校という状況では家族会議までスムーズに行かないことも多いかと思いますが、子どもに共感して一緒に乗り越える意識を持ち、子どもと相談しながら物事を決定して実行していくという流れが重要です。