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小1プロブレムとは
小1プロブレムが起こる3つの要因
- 遊び中心の学習から座学中心の学習へと変化する学習システムの違い
- 幼稚園、保育園から小学校への接続不足の問題
- 「忘れ物をしない」「授業中はしゃべらない」など細かいルールの違い
これらの要因で子どもたちが戸惑い、不安が強くなると「学校が怖い」「学校に行きたくない」といった「行き渋り」につながり、その状態が解消できないまま学校生活を続けると「五月雨登校」「保健室登校」となり、それが長期化すると「不登校」になる可能性もあります。「行き渋り」や「不登校」など問題が深刻化する前に1つ1つの要因ついてしっかり把握しましょう。
小学校教育は遊び中心の学習から学習中心へと変化する
幼児教育は、子どもたちの知的好奇心、興味や関心を喚起し遊びを通しての指導を中心とします。一方、小学校教育では教科等の目標・内容に沿って選択された教材によって教育が展開します。つまり、遊び中心から学習中心に切り替わるのが小学校1年生ということになります。特に保育園に通う子どもたちは、子どもを預かってほしいという親のニーズも含めより保育の特徴が強くなる傾向にあり、学習システムの違いを感じやすくなります。それでは、文部科学省が公表している「幼児期の教育と小学校教育の接続について」の資料を見てみましょう

出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
子どもの知的好奇心、興味や関心を喚起し、遊びを通して「もの」「人」「状況」への関わりが豊かになるよう目指します。遊びが幼児にとって重要な学習となっていることも特徴です。
出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
一方、小学校教育では、各教科の内容によって目標を設定し、その到達を目指すことを重視します。つまり、教育課程が経験カリキュラム(遊び中心)から教育カリキュラム(学習中心)に変わります。子どもたちは、このギャップに戸惑うことになります。
幼稚園、保育園から小学校への接続が上手くいっていない
2つ目の問題点は、接続についてです。教育課程が急に変化するわけですからそれについて徐々に変化させてあげないと子どもたちが混乱するのは明白です。ではなぜ、それがうまくいかないのかについて考えていきます。まずは、都道府県、市町村への接続への意識調査を見てみましょう。(平成21年文部科学省)
出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
ほぼすべての自治体が幼稚園教育から小学校教育への接続は重要と回答していることがわかると思います。
もう一つのデータも見てみましょう。

出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
約80%の都道府県、市町村が接続に対しての取り組みを行っていないことがわかります。では、なぜ取り組みが行われていないのか、その理由についても見ていきましょう。

出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
幼稚園教育と小学校教育との違いが理解されていないから取り組みが行われていないというのはどうかと思いますが、幼稚園や保育園と小学校の接続関係がわからないというのは確かに難しい問題であると考えます。各園は、それぞれが園の方針というものを持っていますので、すべての園からの接続はなかなか難しいのかもしれません。園の幼児と小学校の児童による交流や教師同士の交流などは行われてはいますが、教育課程の編成の連携にまでは至っていないのが現状のようです。小学校側も生活科によって円滑な接続を図ったり、各教科に対しては、入学当初のカリキュラムをスタートカリキュラムとするなど接続に対して工夫も行ってはいますが、それにより接続不足が解消されたとは言えないでしょう。
細かいルールや時間に縛られる
幼稚園教育では、遊び中心で知的好奇心や興味を持つことを重視するので、動くということが多いのですが、小学校教育では急に45分座りっぱなしになります。極端な言い方ですが、今まで好きに遊んでいいと言われていたのが急にずっと座っていなさいと言われたら我慢できない子がいても当然かと思います。忘れ物やルールに関しても自己負担の比率が幼稚園の頃からは急に上がりますのでこちらに関しても戸惑う子はいるでしょう。「学習システム」「接続」「ルール」この3つの要因により「小1プロブレム」は発生しているのです。
教育委員会が考える「小1プロブレム」の主要因とは
次は、教育委員会が考える「小1プロブレム」の要因について見ていきましょう。

出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
家庭におけるしつけが十分ではない
こちらのデータでは、家庭に問題があるという回答が一番多かったのですが、学校の問題ではなく、家庭の問題と考えるのは、責任転嫁とも捉えられかねません。ただ、学習システムの違いをギャップなくつなげていく幼小接続は、必要だと感じていても難しい現状を考えると、学校だけに頼るのではなく、家庭でしっかりとシステムの変化にも対応できる家庭教育を行っていく必要は、今の時代の流れから考えると必須と言えるのではないでしょうか。
児童に自分をコントロールする力が身に付いていない
こちらは、子どもに責任があるような回答ですが、6歳の子どもに自己責任というのは無理があると感じます。接続の問題が大きいとは思いますが、それが学校教育で難しい状況であると考えるなら家庭教育で子どもたちを成長させてあげる必要がこちらもあると感じさせる回答です。
児童の自己中心的傾向が強いこと・授業についてこれない児童がいる
3番目と5番目に多い回答は、「自分をコントロールする力が身に付いていない」と同じで子どもに問題があるということですので省略します。
幼稚園、保育所が幼児を自由にさせすぎる
こちらは幼稚園側に問題があるとの回答です。ここまでくると教育委員会の責任転嫁の体質を疑いたくなりますが、結果的に家庭で対応の重要さを再認識させられるデータとなっています。
「小1プロブレム」の現状と課題

出典 文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」
現状としては、幼稚園、保育所、認定こども園の教育には違いがあり、その違いは良さとも言える。しかし、違いがある分、小学校教育への接続は難しく取り組みが進みにくい。幼児教育と小学校教育の関係を明確にし、それを踏まえた教育方法を実践する必要がある。
このような結論になっています。
小1プロブレムとは、幼稚園や保育園から小学校に上がったときに子どもたちが感じる様々なギャップのことで、「学習システム」「接続」「ルール」による要因が大きいと言えます。ギャップを感じさせないような教育課程の接続は、各園の方針の違いにより難しい現状となっています。教育委員会が考える「小1プロブレム」の発生理由は、接続の問題よりも子どものしつけの問題や子ども自身の問題となっています。教育課程の接続が難しい現状を考えると、学校に頼るのではなく、家庭教育によって子どもが教育課程の接続のギャップを乗り越えられるよう家庭で成長させてあげる必要があると言えるでしょう。家庭教育を学び、家庭で子どもたちに自分をコントロールする力や周りに合わせることができるようなソーシャルスキルを身に付けせてあげることが「小1プロブレム」を乗り越えるポイントになるのではないでしょうか。それが、不登校や行き渋りを未然に防ぐことにもつながるはずです。

