勉強の遅れ・宿題

【公認心理師監修】不登校のときに勉強しない心理とは?見守るだけはNG

不登校の時に勉強しない子どもの心理
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キャリア15年で1000人以上の子どもたちを復学に導いた復学支援専門家。 復学率は現在もなお100%。 心理師として唯一の国家資格である公認心理師で、出版した著書はいずれも初版完売。 現在、エンカレッジの他にも家庭教育推進協会の代表理事と教育支援センターのコーディネーターも兼任。

お子さんが不登校になると、勉強の遅れが気になる親御さんが多いです。私も毎年何人もの方から、

  • 「勉強がこれ以上遅れたらどうしよう」
  • 「全く勉強しなくて親の方が焦ってしまう」
  • 「少しでも勉強をさせたいのですがどうしたらいいでしょう?」

というご相談を受けます。

確かに、勉強の遅れは不登校の要因の1つではあります。

しかし私個人としては、小学生の不登校による勉強の遅れはそれほど気にしなくて良い、むしろ逆効果になることもあると思っています。(理由は後述します)

とはいえ「なんで勉強しないのだろう?」と疑問に感じる親御さんのために、今回は不登校の子が勉強しない心理を深堀りしていきます。

私たち不登校支援グループエンカレッジでは、今まで1000人以上の子どもたちの復学をサポートし、設立17年の現在も復学率は100%を維持しています。不登校に悩む方向けに無料のLINEメルマガの発信もしておりますのでご活用ください。

不登校の子が勉強しない心理

勉強する小学生

親の立場としては、不登校なだけでも将来が心配なのに、さらに勉強までしないとなるとどうしてよいかわからなくなりますよね。

ここでは、不登校の子が勉強しない心理について解説するとともに、親の対応ポイントについてまとめていきますね。

勉強する心の余裕がない

不登校不安定期の女の子

精神的に余裕がないときは、勉強することは難しいです。

例えばいじめなどの大きな心の傷等で不登校になってしまった場合は、不登校は「自分の心身を守るための行動」ですので、無理に登校させてはいけません。安心できる場所で休養すると、次第にエネルギーが溜まってきて活動できる時が来ます。

不登校になりたての頃など、精神的に不安定なときは、まずはゆっくり休ませてあげましょう。その時点ではまだ、勉強どころではないのです。

ただし、見守りすぎて膠着期を過ぎてしまうと、逆に登校しにくくなる停滞期に突入してしまうため、その前に対処することが大事です。膠着期については以下の記事に詳しくまとめています。

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嫌いなことをやりたくない

勉強自体が嫌いな場合も、当然ですが、やはり勉強したくなくなってしまいます。

とはいえ、将来のためには勉強しなければいけないので、勉強嫌いの子に勉強してもらうには周囲の大人の工夫が重要です。

勉強嫌いの子に勉強してもらう工夫例
  • 勉強に飽きやすい → 短い時間サイクルで教科を変えてみる
  • 教科書とにらめっこが嫌い → 単語カードなどのアイテムでストレス軽減
  • 勉強内容がわからない → よりスモールステップで学べる参考書を用意する など

また、勉強が嫌いになってしまった他の原因もあるかもしれません。

  • 親や先生から勉強ができる子と比較されて悲しい気持ちになったことがある
  • 元々完璧主義な性格で「少しでも間違えたくない」と勉強自体に恐怖感がある
  • 勉強に対する親の期待が大きすぎて、プレッシャーに押しつぶされそうになっている
  • 自信がなくて「自分はどうせ頑張っても無駄だから」と最初から諦めてしまっている など

上記のように、勉強自体が一種のトラウマになっている可能性もあります。

「今後どう勉強するか」も大事ですが、「なぜ勉強嫌いになったのか」にも目を向けると、よりお子さんに合った対処法が取れる可能性があります。

勉強嫌いで不登校になったときの対処法
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勉強の仕方がわからない

勉強の仕方がわからなかったり、自分に合っていなかったりすることで勉強が進まない子も多いです。

実は「勉強する」ということを要素に分けると、思っているよりも複雑で高度なことがわかります。

「勉強する」ときの要素
  • 自分が集中できる環境を知り、整える
  • 日常生活の中で、勉強のための時間を創出する
  • 教科別や暗記/読解/思考などのタイプ別によってやることを変える
  • できなかった問題を認識・管理する
  • なぜわからないのかの原因を考える など

このような複雑な過程なので、「どうやって暗記しよう?」「なかなか時間が作れない」等、きっとどこかで躓いてしまうかと思いますが、この「迷う」というのが大敵です。人間は心理的に、迷うと思考でエネルギーが消費され、疲れる割に行動ができません。

つまり、「どうやって暗記しよう?」と迷っている間にズルズルと時間がたってしまい、実際は暗記のための行動が取れていないので暗記もできておらず、自信を失い、もっと勉強が嫌いになって…という負のスパイラルに陥ってしまうのです。

そのため、お子さんが「何か躓いていることはないか」「迷っていることはないか」を頻繁に確認してあげることが大事です。

現状維持バイアス/ホメオスタシス

不登校中のゲーム依存

心理学の言葉で「恒常性」「ホメオスタシス」とも言いますが、人間の脳はつい現状維持に安心して変化を嫌う性質があります。これは頭の良し悪しに関係なく、全ての人間が持っているものです。

一度不登校になってしまった子は、家庭内対応にもよりますが、「不登校でも、意外と普通に生活できるんだな」と知ってしまいます。

そうやって不登校状態に慣れてしまうと、脳の現状維持バイアスが発動して「とりあえずもうちょっとこのままでいようかな」と変化を避けたり、「たとえ再登校したとしてもまた先生に叱られるかもしれないし」とリスク回避しようします。

不登校時に勉強をしないのも、「昨日も勉強してないし、今日もしなくていいや」という現状維持バイアスの可能性もあります。

逆に勉強を家庭でできてしまうと「学校に行かなくても家で勉強するからそれでいい」という現状維持バイアスがかかってしまう可能性もあります。これが冒頭で述べた逆効果になる可能性です。

私はこちらの方が学校に戻る動機がなくなるため心配だと感じています。「家では勉強が遅れてしまうから不安になる。だからこそ学校に行く必要性がある」と思うことも、実は学校復帰には大切なファクターなのです。

将来を考えたくない(現実逃避)

不登校停滞期の子ども

お子さんが勉強していないからといって、お子さんは勉強を気にしていないわけはありません。

実は内心では勉強の遅れや将来のことを不安に感じていて、勉強をすると「分数の足し算すらできない自分」「勉強したのに全然英単語も覚えられない」と自分の未熟さや限界を感じてしまうのではという恐怖感から、あえて勉強を避けているのかもしれません。

これは一種の現実逃避ですが、だからこそこのままではまずいと学校への必要性を感じる動機付けにもなります。

しかし、この状態が長く続くとお子さんがどんどん自信を失い、やろうとしてもできない、やったとしてもうまくいかないということを繰り返してしまうと、学習性無力感となり、やろうとする気力すら失ってしまいます。

もしお子さんが本心では「勉強ができるようになりたい」「やはり学校に行く必要がある」と思っているのであれば、そのタイミングでしっかりとアプローチしてあげる必要があります。

勉強する直近の必要性を感じていない

小学校の教室

今まで1000人以上の不登校の子をサポートしてきて、不登校の子が勉強しない心理として一番多いと感じているのが「直近で、勉強の必要性を感じていない」というものです。

学校に行っていれば、毎日の授業&宿題があるので勉強しないわけにはいきません。特に何も考えていなくても、半強制的に勉強してしまう流れが出来ているのです。

しかし不登校の子は学校に行っていないので、勉強や宿題をしなくても済んでしまいます。自分がどのくらい勉強が遅れているかも、気づいていない場合も多いでしょう。

大人でも、直近の締め切りは守れてもずっと先の締め切りは軽視してしまうことがありますよね。これは時間割引という心理現象で、遠い未来のことはどうしても後回しにしてしまいがちなのです。

だからこそ、勉強を「いつか必要なこと」ではなく、「直近で必要なこと」と捉えられるかが重要と言えます。

上野
上野
宿題をやらない場合はまた少し状況が変わるので、こちらの記事を参考にしてください。
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夏休み中に宿題・勉強をやらないと悩む親続出!やる気を高める方法夏休み・冬休みなどの長期休暇中は、お子さんが勉強や宿題をやらないと悩む親御さんも多いですよね。 しかし実は、義務である「宿題」と義...

「不登校のときに勉強しない心理とは?見守るだけはNG」まとめ

勉強の遅れ

不登校のときにお子さんが勉強しないと、たとえ再登校できたとしても「勉強の遅れをきっかけに、また再不登校になってしまうのではないか」と心配される方も多いです。

実際、周囲の目が気になりすぎてしまう子や繊細な子、完璧主義な子などは、勉強の遅れを気にします。

しかし、エンカレッジではそれをすべて補うことはしません。実際に学校で6時間勉強している子どもたちにはどれだけ家で勉強しても追いつくことは難しいです。

だからこそ、今までの勉強は休んでいたのだから仕方がないと割り切れるようにします。むしろ「休んでいたのにできていたら、家で勉強してたなと疑われちゃうよ」などとカウンセラーが冗談交じりに伝えることで割り切りやすい考え方にしていきます。

そして、みんなと同じところからスタートして、そこから同じように進めます。実際に社会や理科は、単元の切り替わりで以前の学習に対しての影響は限定されます。そうすることで勉強に対しての遅れは気にしなくて済むようにしていきます。

勉強の遅れの負担は少ないようにサポートはしていきますが、実際に学校に行こうと思えるようになると、あれほど嫌がっていた勉強を子どもたちはするようになります。それはなぜだと思いますか?

答え自分が困るからです。

繊細で完璧主義の子は学校に行くとしたら自分が困るからという理由で、どれだけ言ってもまったく手をつけなかった学習を自らやるようになります。やらされる学習ではないので学習効果も高いです。

つまり、子どもたちは学校に行くという目的も、今の生活をどうしていいかもわからず、その日その日を過ごすことでいっぱいで心が落ち着かない状況だから勉強をしないのです。

逆に言えば、目標が決まり、気持ちが学校に向けば、心も落ち着き必要性も感じられるので勉強するようになります。

大切なのは親が少しでも勉強をさせて、学校に行った時に負担をなくさせようとするのではなく、しっかりとした目的、目標を家族で話し合い、子どもが必要だと感じて自ら勉強したいと思えるような環境にしてあげることなのです。

もちろん、その話し合いが家族では難しい場合もあるかと思います。それは不登校のシステムの問題で、一度歯車が崩れてしまうと家族だけではどうしても解決できない場合もあるからです。

その場合は、ご両親だけで抱えず相談して下さい。何とか家族だけで解決したいと思われる気持ちはわかりますが、それで現状が維持されてしまうことよりも、専門家を頼ってでも今の悪循環を一緒に変えていきましょう。

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監修者:上野 剛
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