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不登校の期間が長くなると勉強の遅れが心配ですよね。エンカレッジでも「全然家で勉強しません」「どのように勉強の遅れを取り戻させたらいいのでしょうか?」というご質問をよく受けます。
しかし結論から言うと、不登校の小学生は勉強が遅れても大丈夫です。
…なんて言うと「勉強が遅れたらもっと学校に行きにくくなるのに…!」と思われた方が多いと思いますが、この考え方が根本的に私と異なっています。
なぜ不登校のときの勉強の遅れを私が気にしないのか。
今回は不登校時に勉強しない子どもたちの心理と解決策、私が小学生の勉強の遅れを気にしていない理由をまとめていきますね。
私たち不登校支援グループエンカレッジでは、今まで1000人以上の子どもたちの復学をサポートし、設立17年の現在も復学率は100%を維持しています。不登校に悩む方向けに無料のLINEやメルマガの発信もしておりますのでご活用ください。
↓不登校の解決に必要な対応をまとめた記事はこちら↓
不登校の小学生が勉強しない理由
そもそも不登校の子はなぜ勉強をしないのでしょうか。
「勉強がイヤだから」「ゲームしたいから」…など理由は色々考えられますね。
色々な理由があるなかでも、最も重要な理由を以下でまとめていきます。
勉強の必要性を感じていないから
不登校期間が長くなるとどんどん勉強が遅れていきます。親は「学校に行くときに困るのではないか」と少しでも勉強させようとしますが子どもはなかなかしません。
それはなぜかというと勉強をする必要性がないからです。
なぜなら学校に行っていれば
- 宿題をしないと先生に叱られる
- テストの点数が悪くなる
- 当てられたときに答えられない
- 授業についていけなくなる
- みんなにわからないと思われると恥ずかしい
といった必要性があるから勉強をせざるを得ません。
一方、学校に行っていなければ
- 宿題をしなくても先生に叱られない
- テストも受けないから勉強の必要がない
- 授業についていけなくても困らない
- みんなにも会わないから恥ずかしくもない
となりますよね。
つまり、勉強をする必要がないからやらないのです。
でも「それでは学校に行ったときに困りますよね?」と皆さん思われましたよね。その通りなのですが、そもそもそこの意識が子どもは曖昧なのです。
- 「学校にいつかは行こうと思ってる」
- 「部活は吹奏楽に入りたい」
- 「あそこの大学には行きたい」
- 「将来は看護師になりたい」 など
上の例のような遠い将来のことはイメージできますが、近い将来をイメージできません。
将来の夢のためには「学校に行かないといけない」よね、「勉強しないといけない」よね、と言いますが、目の前のことになると「うーん、今はちょっと無理」と現実逃避します。
この現実逃避の状態では勉強をしようとは思いません。
親は学校に行ったときに困るからと強い危機感がありますが、子どもたちからしたら学校に行くということ自体がフワフワしているので危機感がないのです。
不登校支援をしていて家庭内の状況全体を客観的にアセスメント(分析)できていると、この温度差はよくわかるのですが、いざ親御さんが自分の家庭のこととなるとこのギャップに気づかないことはよくあります。
親が勉強を教えるのは難しいから
子どもが勉強しないのは必要性を感じていないことが理由なのですが、親が勉強をさせられないのはなぜなのでしょうか?それは親が勉強を教えることがそもそも難しいからということなのです。
先ほども「親御さんが自分の家庭のこととなるとこのギャップに気づかない」と伝えましたが、自分の子どもに教えるのは主観が入るのでそもそも難しいです。
うちの奥さんも英語の教師をしていましたが、子どもたちは英語塾に通っています。ちなみに子どもは今年中3(男)と小学5年生(女)で英語塾には5年ほど通っています。
周りのママ友からも「自分で教えたらいいのに」と言われていますが、「生徒には優しくできるけど、自分の子にはつい怒ってしまって絶対無理」と言っています(笑)
特に不登校の状況だと母子依存、退行、わがまま、子ども上位といった状況が多いですが、そのようななかでさらに子どもに学習意欲がない状態で教えるのは至難の業と言えるかもしれません。
不登校の子に家庭学習ツールが向いていないから
家庭で勉強を教えるとなると、チャレンジやスタディーサプリなどの通信教育がメインになるかと思います。
しかしそもそも通信教育というものが学習意欲が高く自己管理できる子ども向けの学習スタイルなので、母子依存が強く、幼い子どもや自己管理能力、自己責任能力、自己解決能力の不足している子には向いていません。
不登校になると母子依存になって幼くなりやすく、自己管理能力、自己責任能力、自己解決能力がどんどん低下しがちなので、不登校の状況で家庭学習をすること自体に無理があるのです。
不登校の小学生が勉強の遅れを気にしなくていい理由
子どもにとって不登校の状態では勉強の必要性がなく、家庭で親が勉強を教えるのが難しいことをお伝えさせて頂きましたが、「ではこのまま勉強が遅れていくのを黙って見ているしかないのでしょうか?」と気になる方もいらっしゃるでしょう。
しかし復学支援専門家としては、「勉強の遅れ」については親と子で意識に大きなギャップがあると感じます。
小学生の間は、勉強の遅れはそれほど気にしなくて大丈夫です。親御さんは勉強の遅れに気を取られすぎていると思いますので、その理由をまとめていきますね。
勉強の遅れは不登校の原因にはなりにくいから
クライエントさんに「子どもが学校に行くのに何が困ると思いますか?」と聞きますと多くの方が「勉強の遅れ」とおっしゃいます。
ただ、子どもに聞くと「勉強の遅れ」と言う子は親ほどはいません。「勉強の遅れは気になる?」とこちらから聞くと「あー、少し気になる」と言った感じの返答が多いです。
そもそも必要性を感じていないからイメージできていないというのもあるかもしれません。勉強の遅れを気にする子もいますが、勉強の遅れが理由で学校に行けなくなることは経験上ほとんどありません。
1000人以上の子どもの学校復帰をサポートしてきましたが、小学生に関しては、不登校期間が3年間の子でもそれほど影響はなかったです。
もちろん、支援中に訪問カウンセラーが学習のサポートをするからというのもありますが、それでも小学生で必要なのは、国語では連絡帳を時間内に書き写せる書き取り能力、算数では九九や掛け算、割り算くらいです。
最近、クライアントさんから「勉強の遅れで困ったケースの方の例を教えていただけますか?」と聞かれたのですが1000人以上の子どもたちを見てきたのですが思い浮かばなかったです。
思い浮かんだのは私学の受験勉強から不登校になった子が学校復帰した時に中学受験をどうするかといったケース。勉強はしたくないけど公立には行きたくない。このようなケースは何件かありますが、それは受験組だけの特殊なケースなのでそれ以外の子は本当にないのです。
それはなぜかというと、勉強の遅れを取り戻してから学校に復帰するというスタイルを取っていないからなのです。
勉強していなかったのだから仕方がないと割り切ってよい
私たち復学支援専門家は、勉強を取り戻すのではなく割り切らせるスタイルを取っています。
なぜかというと、学校に行っている子は6時間勉強しているので6時間以上の勉強をしないと学校に行っている子に学習が追いつかないからです。
学習意欲のなさや家庭学習の難しさは上記の内容でわかっていただけたかと思いますが、学習意欲がない状態で、不登校の子に向いていない家庭学習を学校に行っている子以上にやる…というのは無理があります。
うちの息子風に言うと無理ゲーです(笑)
ですから、取り戻すのではなく私たちは「学校を休んでいたんだから仕方ない。休んでいてわかったら逆におかしいだろ」と子どもに伝えます。
訪問カウンセラーも「これで勉強できたら休んで家でずっと勉強していたんじゃないかって思われるよ(笑)」と言って「できなくていい」と安心させます。
その割り切るということが実はとても大切なのです。学校に復帰したらわからないことだらけです。もちろん、できるだけわからない事ないように徹底的にサポートはしますが、それでも学校で起こることは訪問カウンセラーや親にもサポートはできません。
学校には訪問カウンセラーも親もいないのだから1人で解決しないといけないのです。
なので、そういったときに常に「どうしよう」と思っていたらいつまでも心配なままでストレスを抱え辛くなりまた休んでしまいます。
でもわからないことだらけでも「仕方がない」と割り切って乗り越えることができたら、それは大きな自信となります。
「わからないことだらけでも行けたじゃん。これで毎日行ってわかることが増えたらもっと楽になるじゃん」と訪問カウンセラーに褒めてもらってさらに学校に行く不安が減っていきます。
そうなると嫌だった学校が楽しいと思えるようになる子もいます。
つまり勉強の遅れ対策で一番大切なのは、学習の遅れを取り戻すのではなく、「できなくても仕方ない」と割り切る力なのです。
勉強の遅れを取り戻すよりも再登校が先
皆さんは、勉強が遅れているのが心配だから勉強を取り戻したら行きやすくなるのではないかと考えているかと思いますが、実は順番が逆なのです。
勉強の遅れを取り戻して安心させてから行くというのは何度も言いますが、無理ゲーです。
必要性がないから勉強ができないなら、必要性を与えてあげれば良いのです。つまり学校に行く気持ちにさせてあげればいいのです。学校に行くという気持ちになれば勉強はします。
行ったときに困るのは自分なので、最初に書いたこの内容が現実になり必要性が生じるからです。
- 宿題をしないと先生に叱られる
- テストの点数が悪くなる
- 当てられたときに答えられない
- 授業についていけなくなる
- みんなにわからないと思われると恥ずかしい
勉強の遅れを取り戻してから学校復帰ではなく、家族でしっかりと話し合って学校に行くという気持ちになってから勉強のサポートの順番の方が実は効果的なのです。
先にしっかりと学校に行くという気持ちにするための話し合いが家庭でうまくできないから困っている方も少なくないと思いますが、私はこの順番がベストだと思っていますし、もしその話し合いが家庭でできないのであれば無理ゲーを続けるのではなく専門家に相談するという選択肢も検討してください。
ちなみに復学支援専門家は、登校刺激のときに教育コーチングで子どもの気持ちを学校に行きたいと思えるようにぐっと引き上げます。
そして訪問カウンセラーはそこで初めて勉強の話をします。私たちが登校刺激まで勉強の話を一切しないのは、
【勉強のサポート→学校に行きたいきもち】
ではなく
【学校に行きたい気持ち→勉強のサポート】
の順番がベストだと考えているからです。
ただ、これはキャリアと専門的なスキルが必要なので復学支援専門家にしかなかなかできないのですが、家庭で話し合うことができれば家庭内で解決した方がいいので、必要性→学習のサポートの順番で取り組んでみてください。
家庭では難しいと感じられた場合は、諦めるしかないのかと思わずに、家庭以外でもできる選択肢があるということを覚えておいてください。
実際の登校刺激での教育コーチングの様子はクライエントさんがblogで詳しく書いてくれているのでこちらをご覧ください↓
「小学生の不登校は勉強の遅れを気にしなくていい!復学支援専門家が解説」まとめ
不登校の子どもが勉強をしないのは、遅れていくのはなんとなく心配には感じているものの勉強が今必要だと感じていないからです。必要性がふんわりしているから勉強しないのです。
学校に行けば勉強する環境があるので、勉強しやすいです。しかし、自宅で学校と同じくらい勉強するのは至難の業です。親御さんが教えたり、通信教育で学ぶスタイルは不登校の子に向いていない側面もあります。
しかし勉強の遅れよりも大切なのは、まずは学校に行くことなのです。学校に行きさえすれば、勉強する必要性が出てくるので、子どもも「今必要なこと」として勉強をする気になります。
そして勉強が遅れてしまっても「勉強していなかったのだから仕方ない」と割り切る力も重要です。「勉強の遅れ」という事実から逃げるのではなく、勉強が遅れている自分を客観的に捉えながらも自分を否定せず、くよくよしないで勉強の遅れを取り戻す過程で忍耐力や自立心が身について行きます。
つまり、不登校を解決することが勉強の遅れを取り戻す一番の近道なのです。
皆さんもぜひ今の考え方を見直してみましょう。