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ここ数年、起立性調節障害(OD)の子の不登校の相談が増えてきています。
十数年前は「起立性調節障害」という言葉もありませんでしたが、ここ数年はよく聞くようになりました。
不登校の中でも起立性調節障害を合併しているケースは3~4割とも言われ、不登校解決において起立性調節障害の対応は非常に重要である一方、そもそも起立性調節障害がよくわからない方も多いのではと思います。
特に親御さんとしては、
- 不登校になると起立性調節障害になりやすいのか、それとも起立性調節障害になると不登校になりやすいのか
- 学校復帰する際は、起立性調節障害を改善するのが先か、学校復帰が先か
といったことも気になるのではないでしょうか。
今回は公認心理師の立場かつ現場で復学支援する視点から、起立性調節障害の原因や親の対応時のポイント、解決方法までをまとめていきます。
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↓不登校の解決に必要な対応をまとめた記事はこちら↓
起立性調節障害(OD)とは
まずは起立性調節障害がそもそも何なのかを見ていきましょう。
Wikipediaには、起立性調節障害は「自律神経の不調による身体の病気」と定義されています。
起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)とは、自律神経失調症の一種、OD(ドイツ名: Orthostatic Dysregulation)と略される事もある。生活リズムが乱れている様に見えるが、自律神経失調症状のひとつと考えられている。「起立や座位で脳血流が減少し、思考力と判断力が低下する」身体の病気である。 10歳から16歳に多く、日本の小学生の5%、中学生の約10%にみられ男女比は 1:1.5〜2 と報告されている。概日リズムが5時間程度うしろにズレている事が原因で午前中に交感神経活動が活性化しない。一方、夜間に交感神経が活発化するため寝付きが悪くなる、つまり『宵っ張りの朝寝坊』になりやすい。
引用:Wikipedia
つまり「気持ちの問題で朝に起きられない」「根性がないから起きられない」ではないのです。
起立調節性障害の症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 頭痛がある
- 腹痛がある
- 食欲がない
- 顔色が悪い
- 疲れやすい
- 乗り物酔いしやすい
- 失神や失神のような症状
- 気分が優れないことが多い
- 動悸・息切れを起こしやすい
- 午前中は調子が悪いことが多い
- 立ちくらみやめまい、ふらつきを起こしやすい
- 朝は体調が優れなくても、午後や夜になると元気になる
- 嫌なことを見聞きしたり想像したときに気持ちが悪くなる など
心理の専門家が分析しないと起立性調節障害かの判定はつきませんが、上記のような特徴が複数個あてはまった場合、起立性調節障害の可能性も視野に入れましょう。
起立性調節障害の原因
起立性調節障害は、概日(がいじつ)リズムが5時間ズレることが原因と言われています。
概日リズムとはすなわち体内時計のイメージなのですが、外的要因(光・温度・食事・環境等)によって体内時計がズレていってしまい、これが5時間以上ズレると起立性調節障害になりやすいと言われています。
- ストレスで眠れない
- 深夜までスマホやゲームをする
- 生活リズムがズレる
- 不登校になる
- 起立性調節障害を併発する
学校で嫌なことがあると「学校に行きたくない」というストレスが発生して、そのストレスを解消するために深夜までスマホやゲームをします。すると当然朝が起きにくくなり、学校にも行きたくないので登校しぶりや休みがちになっていきます。
寝不足でイヤイヤ登校して疲れて帰ってくると、帰宅後夕方に昼寝してしまい、夜中に眠れなくなります。そして眠れないのでスマホで時間つぶしをして、翌朝また起きられなくて…を繰り返すうちに、生活リズムが5時間以上ズレ込み起立性調節障害を発症します。
昼間眠いのでぼーっとして授業に集中もできず勉強の遅れが出たり、度々学校をお休みすることでクラス内で孤立感を感じるなどの2次的なリスクも発生すると、不登校が長期化してしまうことも多いです。
身体が辛いのに登校しなければいけないプレッシャーで起立性調節障害も悪化してしまう…という流れが、起立性調節障害と不登校のよくある流れです。
起立性調節障害とうつ病のちがい
起立調節性障害の症状である慢性的な体調不良、倦怠感、精神不安、食欲がないなどは、うつ病とも似ています。そのため「起立調節性障害はうつ病なのでは?」と勘違いされる方も多いです。
しかし、この2つは異なるものです。うつ病は1日中体の不調があることが多いのに対し、起立調節性障害では夜になるにつれて体調が回復して元気になることが多いからです。
というのも、起立性調節障害の子どもは、寝ているときと立っているときの血圧や心拍数を計ると朝が悪く、夜は数値が改善します。めまいや動機などの体調不良も、この血圧や脈拍の変化が原因と考えられています。
うつ病患者が使う抗うつ薬の副作用で起立性低血圧が起こって起立調節性障害が悪化するケースもあるので、うつ病と起立調節性障害を混同してはいけません。
起立性調節障害でも遊びに行ける理由
起立調節性障害のお子さんを持つ親御さんは「夜は元気なのに」「朝に体調不良で学校を休んでも、午後から遊びに行けるのはなぜ?」と疑問に思う方も多いです。
確かにお子さんが夜に元気な姿を見ると「ただ学校をサボりたいだけなのでは」「勉強したくない甘えに違いない」と感じるかもしれませんが、前述のとおり起立調節性障害の原因は血圧や脈拍の日内変化や脳内血流低下等なので、その原因が夜に改善されれば元気になれるのです。決してお子さんが嘘をついているわけではありません。
そのため、お子さんが学校をサボっているわけではない、甘えているわけではないとわかってあげましょう。
起立性調節障害と不登校は関係する?
「起立調節性障害と不登校は関係するの?」という質問もよく頂きます。
結論を申し上げると、やはり起立調節性障害と不登校は関係していると言えます。パターンとしては、以下の3つがあります。
- 不登校先行型
- 起立調節性障害先行型
- あいまい型
以下で詳しく見ていきましょう。
不登校先行型
不登校がきっかけで、起立調節性障害になることもあります。
よくある例としては、以下のようなケースです。
- 学校に行きたくない・勉強嫌いのストレスで眠れない
- ゲームやスマホを深夜にしてしまう
- 朝起きられなくなったり生活リズムが狂う
- 起立調節性障害(OD)を発症
起立調節性障害は甘えやサボりではないので休養や適切な治療が必要ですが、注意が必要なのは「本当は起立調節性障害ではないのに、不登校の症状を起立調節性障害と勘違いしてただ待っているケースがある」ということです。
不登校の子は外に出られない子が多いので、親だけ病院へ行って親への問診だけで起立調節性障害の疑いがあると言われ、そのうちに「うちの子は起立調節性障害に違いない」と親御さんも思い込んでしまって、気づいたら不登校が悪化しているケースも多いのではと私は感じています。
以前の記事にも書いた通り、不登校は長引くほど状況が悪化します。
そのため、まずは専門家によるアセスメントやカウンセリングで本当に起立調節性障害なのかの診断を受けるところから始めましょう。
起立調節性障害先行型
起立調節性障害から不登校になるケースももちろんあります。
- 起立に伴う自律神経の乱れ・過少や過剰な交感神経の活動
- 起立性調節障害(OD)
- 心理社会的ストレス・活動量低下
- 生活リズムの乱れ
- 不登校
起立性調節障害先行型の不登校は、起立性調節障害を発症したことにより生活リズムが乱れ、学校も遅刻が増えたりや休みがちになり、学校でのストレスがより起立性調節障害の症状を悪化させ、家で寝ていることも多くなり、活動量が低下することでより自律神経が乱れ、悪循環に陥ってしまいます。
起立性調節障害先行型については、不登校ではない状態で起立性調節障害になり、それが原因で起きにくくなり不登校になるので、ドクターにしっかりと分析してもらい適正な治療のもと、しっかりと起立性調節障害を改善してから登校を目指してください。
もし登校できない期間が長くなることで不登校による2次的リスクが高いと考える場合は、起立性調節障害と向き合いながら五月雨登校や別室登校をしながら調整していく必要もあるかと思います。
あいまい型
上記2つに当てはまらない、あいまい型のケースもあります。やはり不登校と起立性調節障害の症状はとても似ているので判別しにくかったり、同時進行してしまっているような場合です。
こちらのあいまい型については、どちらの傾向が強いのかをそれぞれの専門家に分析してもらい、その判断のもとで柔軟な対応をしていきましょう。
不登校と起立調節性障害の見分け方
復学支援専門家として私の経験上の話になるのですが、起立性調節障害の症状の重い子は立ちくらみがひどいです。
登校するときは電信柱に寄りかかりながら登校するなど、とてもフラフラしています。起立性調節障害でも学校に行きたいので必死に病気と向き合っているのですが、見ていて本当に大変だと思います。血圧が上がるまで時間がかかるので、起きるのも登校の2時間前など早く起きなければいけません。
しかし、起立性調節障害ではない子は、一見似た症状なのですが朝は早くから起きようとしません。そして、登校時間が終わってからの回復具合が目覚ましく、ゲームをしながらソファーを飛び跳ねたりしているのに、次の朝になると「私、ODなんで」と辛そうにします。
本当に起立性調節障害の子は登校時間を過ぎると少し回復はしますが本当に少しずつといった感じで、顔色も真っ白です。「こんなに白くなる?」と思うくらい、顔色が悪くなったりします。
一方で起立性調節障害ではない子は、不登校不安定期の頃は顔色も真っ白ですが、膠着期になると顔色も良くなります。朝でも顔色は良いのに、起きられないのです。
このあたりの症状の違いを比べてみて、お子さんの起立性調節障害が重度なのか軽度なのか判断材料になると思います。
起立調節性障害の個人判断は避けて
気をつけたいのが、子ども自身の起立性調節障害のアピールです。
元気だと「学校に行きなさい」「なんで元気なのに学校に行けないの」と言われるので、本当は体調不良ではないのに体調不良をアピールする子もいます。中には、体調不良だと自分に暗示をかけてしまっている場合もあるでしょう。
特に最近は、インターネットで起立性調節障害のことを調べている子もいますので、都合よく「私ODなんで」と言ったりすることもあります。
本当の起立性調節障害ではないのに起立性調節障害の治療を行っても意味はありませんので、子どものアピールになっていないか、思い込みになっていないかを冷静に判断しなければいけません。
起立性調節障害だと勉強のやる気が起きにくい
起立調節性障害は脳血流を低下させるため、集中しにくい、集中力が持続しにくい状態になりやすいです。
そのため、勉強にも集中できなかったり、理解力が落ちたりしてますます勉強に対する苦手意識が増長することもあります。
勉強に対する苦手意識や集中力の低下が、学校に行きたくない気持ちを増幅させてしまうこともあります。
不登校解決と起立調節性障害の改善、どっちが先?
朝起きられない、体調不良や倦怠感等、起立調節性障害の症状は不登校の症状とも被るものが多いです。そのため不登校と起立調節性障害を併発している場合は、どちらを優先的に解決するのかは難しい判断です。
起立性調節障害は身体症状なので、朝起きられないなら登校もできないことから起立性調節障害の改善が先と思われますが、不登校の状態が精神的ストレスに繋がる場合、不登校が起立性調節障害を悪化させ長期化させる可能性もあるのです。
ではどうするべきかと言うと、まずはお子さんの症状がどれだけ重いのか、専門家の分析が重要になってきます。
起立調節性障害でも不登校解決はできる
私は復学支援専門家として、1000人以上の不登校の子どもたちと関わってきました。その1000人以上の子は全員再登校できていますが、その中で起立性調節障害の疑いがあった子は100人以上はいるように思います。
私がエンカレッジを設立してから復学支援で登校したクライアントは700人ほどですが、その中で起立性調節障害の疑いがあった子や診断があった子は140名ほどです。
その140名のうち、復学してから症状が治まった子が135名、症状が続いている子は5名です。5名のうち4名は起立性調節障害の診断が出ていますが、残り1名は病院には行っておらず、私が起立性調節障害と疑っている子になります。
起立性調節障害の疑い・診断がある子 140名
→復学して症状が治まった子 135名
→症状が続いている子 5名
この実際の結果からも、起立性調節障害と学校復帰のどちらが優先かと聞かれたら、学校復帰を私はおすすめしています。
しかし、これは不登校先行型の起立性調節障害だからです。エンカレッジに相談に来られる方は、ほとんどが不登校になって起立性調節障害を併発していますが、不登校先行型の起立性調節障害は症状が軽度なことが多く、子どものアピールやネット検索のしすぎなどで起立性調節障害と勘違いしているケースもあるため、再登校によって起立性調節障害が改善されやすくなります。
- 学校に行けていない罪悪感がなくなる
- 不登校であることを誰かに悪く思われているのではという恐怖がなくなる
- 家から出て、登下校などの軽い運動が行われる(運動療法)
- 自然と規則正しい生活リズムになり、概日リズムが整う
ただし、これらはあくまで不登校先行型の起立性調節障害の場合です。
お子さんが起立性調節障害先行型の不登校場合は起立性調節障害の症状が重く、治療を優先した方が良い場合が多いので、そこは心理の専門家に相談するべきです。
「不登校と起立性調節障害(OD)の関係性と対処法」まとめ
起立性調節障害(OD)の関係性や対処法を、今までの経験を踏まえて書かせていただきました。私は復学支援専門家なので、不登校先行型の起立性調節障害が多くこのようなデータになっていますが、起立性調節障害が専門の医院では起立性調節障害先行型が多いと思われるので、また違ったデータになると思います。
大切なのは、起立性調節障害は「やる気がない」「甘え」なのではなく、身体起因の不調であることを理解し、お子さんにあった治療や対処法を取ることです。
不登校との関連性が研究されている発達障害も「しつけ」や「子どもの素行」ではなく、脳機能の問題です。不登校も「勇気がない」「行ったら何とかなる」「甘え」ではないのです。昔はそのような言い方がされた時代もありましたが、科学や心理学研究も進歩しているため、親世代も知識をアップデートしていきましょう。
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