【2026年7月30日】富山県 小学校教育課程夏季研修会で不登校支援について講演しました
監修者:上野 剛
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2026年7月30日、富山県総合運動公園会議室で開催された「令和8年度 小学校教育課程夏季研修会(保健部会)」にて、養護教諭の先生方を対象に、不登校支援についての講演をさせていただきました。
当日は、約90名の先生方にご参加いただきました。
夏休み期間中とはいえ、先生方にとっては研修やさまざまな業務があるお忙しい時期です。そのような中、これだけ多くの先生方に足を運んでいただき、本当にありがとうございました。
今回のテーマは、
「現場で迷わない 不登校対応の基本とコツ
―保健室を中心にした学校における支援の進め方―」
です。
今回の講演内容
不登校の子どもへの支援では、「何とかしてあげたい」という思いがあっても、
「この声かけでいいのだろうか」
「どこまで登校を促していいのだろうか」
「保健室登校をどう次につなげればいいのか」
と、学校現場で判断に迷われることも少なくありません。
特に養護教諭の先生方は、教室には入りづらい子どもにとって非常に身近な存在であり、保健室が学校との大切な接点になるケースも多くあります。
そこで今回は、20年以上にわたり不登校の子どもたちの復学支援に携わってきた立場から、学校現場で実際に活用できる考え方や関わり方を中心にお話ししました。
単に「学校へ行かせる・行かせない」という話ではなく、
- 不登校支援におけるそれぞれの専門性
- 子どもの背景やスキーマを理解すること
- 子どもの気持ちをまず受け止めること
- 子どもの自己決定を大切にすること
- リフレーミング
- トークンエコノミー法
- 家庭と学校が同じ方向を向いて支援すること
など、実際の支援場面をイメージしながらお伝えしました。
養護教諭の先生方と一緒に考える時間に
今回の研修では、一方的に話を聞いていただくだけではなく、実際に考えたり、取り組んだりしていただく時間も設けました。
特に印象的だったのは、先生方が非常に熱心に参加されていたことです。
不登校の子どもへの対応には「これをすれば必ずうまくいく」という一つの正解があるわけではありません。
だからこそ、その子の性格や育ってきた環境、物事の捉え方などを理解しながら、
「この子にとって、今必要な支援は何だろう」
と考えていくことが大切です。
研修後にたくさんの感想をいただきました
研修後のアンケートでは、たくさんの感想をいただきました。
中でも今回、複数の先生からいただいたのが「子どものスキーマ」についての感想でした。
「子供のスキーマと自分のスキーマが違うことをしっかり理解して、自分の価値観を押し付けないことが大切だと思いました。」
同様の感想を4名の先生からいただきました。
※スキーマとは、これまでの経験などからつくられる「その人なりの物事の見方や受け止め方」のことです。例えば、先生から同じように注意されたとしても、「自分のために言ってくれた」と受け止める子もいれば、「自分はダメなんだ」「先生に嫌われた」と受け止める子もいます。このように、同じ出来事でも、その子が持つスキーマによって感じ方やその後の行動が変わることがあります。
私たち大人はどうしても、自分自身の経験や価値観から子どもの行動を見てしまいます。
しかし、同じ出来事でも、その子がどのように受け止めるかは一人ひとり違います。
「子どもの立場になって考える」だけでなく、その子がどのような世界の見方をしているのかまで考えてみる。
これは不登校支援において、とても大切な視点だと考えています。
「明日から使ってみたい」という声も
今回の講演では、考え方だけでなく、学校ですぐに実践できる方法についてもお話ししました。
それが「トークンエコノミー法」と「リフレーミング」です。
アンケートでは、
「『できなくても受け止める』『やろうとしたことを褒める』に意識を向けていこうと思います。」
という感想を6名の先生からいただきました。
また、
「実際にリフレーミングをやってみると楽しくて心がほぐれた。ぜひ子供たちとやってみたいと思った。」
という感想も複数いただきました。
知識として「分かった」で終わるのではなく、
「明日、学校でこの子にやってみよう」
と思っていただけたことは、今回の講演で私自身がとても嬉しかったことの一つです。
学校だけ、家庭だけではなく「同じ方向を向く」
もう一つ、今回のアンケートで印象に残ったのがこちらの感想です。
「家族の関係がよくなると、子供が変わっていく。『家族全員が同じ方向を向いている』と言う言葉に共感しました。学校も同じ方向を向いて支援していきたい」
こちらも6名の先生から同様の感想をいただきました。
不登校支援では、学校だけが頑張ってもうまくいかないことがあります。
反対に、家庭だけで何とかしようとしても難しいことがあります。
担任、養護教諭、スクールカウンセラー、保護者、そして必要に応じて外部の専門家。
それぞれが自分の専門性や役割を生かしながら、子どものために同じ方向を向くことが大切だと考えています。
今回のアンケートでも、「学校には家庭に入り込むことの難しさがある」「それぞれの専門性や強み・弱みを理解して、多職種で協働することが大切」というご意見をいただきました。
学校と家庭をつなぐ「不登校支援の専門家」という役割
今回のアンケートの中で、私自身とても印象に残ったのが、「不登校支援の専門家」という役割についてのご意見でした。
「校内に、登校しぶり、不登校、学級しぶりをコーディネートする人がいればよいのにと思っていたので、エンカレッジはまさにその役割なのだと思った。」
また、別の先生からは、
「これからは、『不登校専門家』という不登校児、家庭に入り、伴走する立場が出現してきたのだと思った。」
という感想もいただきました。
学校の先生方は、子どもたちのために本当に一生懸命対応されています。
一方で、不登校の支援では、学校での子どもの様子だけではなく、家庭での過ごし方や親子関係、保護者への継続的な支援など、学校だけではどうしても対応しきれない部分があります。
アンケートにも、
「学校は家庭に入り込めない、家族を支援する(時間を掛ける)難しさ、ノウハウのなさ、卒業という区切りの存在がある。」
という率直なご意見がありました。
そして、もう一つ印象的だったのが、
「子供達のためにどの教職員も一生懸命対応しているが、少し方向性が違ったりすることがある。」
という言葉です。
これは、私自身がこれまで学校と連携しながら不登校支援をしてきた中でも、とても大切だと感じているところです。
誰かの対応が「悪い」のではなく、それぞれが子どものことを考えて動いている。
しかし、それぞれが違う方向から支援すると、結果として子どもや保護者が迷ってしまうことがあります。
だからこそ、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、家庭、そして必要に応じて外部の不登校支援の専門家が、それぞれの専門性を生かしながら同じ方向を向いて支援することが大切です。
エンカレッジはその中の役割の1つです。学校と家庭の間に入り、双方と連携しながら、子どもの状態を見立て、家庭でできること、学校でできることを整理し、学校復帰までの道筋を一緒に考えていく。
今回、現場の先生方から「そのコーディネートを専門家が担ってもらえると心強い」という言葉をいただけたことは、これまで私たちが続けてきた支援の役割を改めて考える機会にもなりました。
「保健室で記憶に残る1年に」
そして、個人的にとても心に残った感想があります。
「『保健室の中で少しでも色々な思い出ができるように、記憶に残る1年にしてあげる』という言葉が心に残りました。」
この言葉についても5名の先生から感想をいただきました。
こちらはジャネーの法則という、年齢を重ねるにつれて1年が過ぎ去る体感が短く感じる現象を説明する心理学の言葉と共に人間は同じことは記憶として残しにくいから保健室の中で色々記憶に残ることをたくさんして欲しいという話をした内容についての感想です。
不登校支援というと、どうしても「教室へ戻すにはどうすればいいか」ということに目が向きがちです。
もちろん、その子が学校復帰を望んでいるのであれば、そのための支援も大切です。
しかし同時に、今その子が過ごしている時間そのものも大切にしたい。
保健室で過ごした一年が、ただ「教室に行けなかった一年」になるのではなく、
「あの先生とこんな話をした」
「こんなことを一緒にやった」
「あの時間があったから少し前を向けた」
そんな記憶の残る時間になればと思っています。
不登校支援を「一人で抱えない」学校へ
今回のアンケートには、
「養護教諭だけでなく、担任にも聞いてほしい内容だった」
という声もいただきました。
不登校の子どもを支援していると、先生自身が、
「自分の対応が間違っているのではないか」
と悩んでしまうことがあります。
しかし、不登校支援は一人の先生が抱えるものではありません。
学校、家庭、専門機関がそれぞれの役割を理解し、必要なときには専門家とも連携しながら、子どもを支えていく。
そのような体制づくりが、これからますます必要になると感じています。
今回の研修が、明日からの学校現場で子どもたちと関わる際の一つのヒントになれば嬉しく思います。
ご参加いただいた先生方、そして今回このような貴重な機会をいただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございました。



