

最新記事 by 監修者:上野 剛 (全て見る)
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こんにちは、公認心理師の上野です。
今回は「兄弟全員が不登校になってしまった」という状況に直面しているご家庭に向けて、お話しします。
「ついに下の子もまでも」「子どもたちが全員家にいる」――まるで自分の家だけ時間が止まってしまったかのような気持ちになりますよね。
でも、結論から言うと、兄弟全員の不登校は決して珍しいケースではありません。むしろ、私たちのような不登校支援専門家からすると、非常に良くあるケースです。
今回は、兄弟全員が不登校になったときの親の考え方や対処法についてまとめていきますね。
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兄弟全員が不登校になったときの考え方

兄弟のうち1人が不登校のときと、兄弟全員が不登校のときでは、再登校のしやすさがかなり変わります。
兄弟全員が不登校のケースは、私たち専門家でも慎重に進めます。
なので、兄弟全員が不登校のときは、通常の不登校対応に加えて兄弟全員が不登校のときならではの対応や考え方が必要です。
今からその考え方について、ご説明していきますね。
「家族システム論」に沿って考える

兄弟がそろって不登校になると、多くの親御さんは「家庭環境に問題があるのでは」と思いますよね。
確かに、不登校になりやすい家庭内対応というのはあります。例えば、親が何でも先回りして子どもの身の回りのことをしたりして子どもの自立心が未発達のときなどです。
しかし不登校の原因は、家庭環境だけではなく、学校環境が原因のときもあります。
例えば、長男が学校でトラブルを経験し不登校になったとしましょう。その状況を間近で見ていた弟も「学校って怖い場所なんだ」と無意識に感じてしまうことがあります。
このように、一人の不登校が家庭内の空気を変え、次の兄弟にも影響していく。これを心理学では家族システム論と呼びます。
家族システム論はアメリカの心理学者マレー・ボーエンが提唱したもので、例えば兄の不登校に母親が過剰に反応すると、それを見た弟も無意識にプレッシャーを感じ、登校への抵抗感が生まれてしまう等が考えられます。
だからこそ、不登校の子個人個人で見るだけでなく、家族全体を分析していくことが重要なのです。
兄弟・姉妹で揃って不登校になったときの考え方はこちらの記事にも書いていますので、お時間ありましたら見てみてくださいね。

兄弟・姉妹全員が不登校になるのは普通

家庭内の兄弟の誰かが不登校になると、他の子にも不登校が連鎖するのは非常に良くあることです。
ですので、親御さんのせいというより環境全体が原因なので、悲観せずに「よくあること」と思って対応して行きましょう。

不登校の兄弟全員で家庭内ルールを統一する

兄弟が全員不登校になった場合、兄弟それぞれで年齢も性格も状況も不登校になった原因も異なるため、親御さんとしては対応に迷うかと思います。
ただ、基本的には不登校中は全員に対して家庭内ルールは統一するのがいいでしょう。
例えば、兄弟の中でゲームばかりする子と、それほどゲームに興味がない子がいたとしますが、それでも「学校の時間はゲームはしない」というルールで統一します。お兄ちゃんはゲームが好きだし年上だから1時間はOK、弟は年下だしゲームをあまりしないから30分OKなどという差別化はしません。学校を休んでいるという条件が一緒だからです。
しかし、兄弟全員が学校に行けるようになったら、お小遣いの額や夜の寝る時間は学年によって変えて行きます。このあたりは、今度また詳しく記事にするかもしれません。
兄弟全員が不登校になったときの親の対処方法
一番上の子から再登校を促す

不登校のなる流れとしては、基本的には上の子から下の子が影響を受けます。逆に下の子が休んでいても上の子は影響を受けにくいです。
経験上ほとんどそうです。
理由は上の子は年齢が離れれば離れるほど精神的にも成長しているので、逆に下の子のことを心配して親に「大丈夫?」と気にかける余裕も出てくるので引っ張られにくいです。
逆に上の子が休んでいる場合は、「お兄ちゃんずるい」「お姉ちゃんいいな」というような影響を受けて引っ張られてしまいます。
なので登校刺激の順番としては、基本的に上の子からになります。
一番上の子から「再登校しようかな」という気持ちになってもらうのがポイントです。
逆に上の子だけ休んでいて、下の子が休んでいない場合は、下の子が影響を受ける前に早めに支援して上の子を学校復帰して安定させてあげることが下の子に影響を出させないためには大切です。
再登校は兄弟全員一緒に

兄弟姉妹で完全不登校になっている場合は、全員同時登校が基本です。誰かだけ登校しないのでは影響を受けてしまうからです。
一番上の子の登校刺激を丁寧に進めて、上の子の登校意志が固まってきたところで、下の子たちには「お兄ちゃんと一緒に行こう」と促し、みんなで登校するのが一番スムーズな流れです。
兄弟全員が不登校になったときの親のケア方法

兄弟が全員不登校になると、親の心も揺さぶられますよね。
「私のせいだ…」と自責する気持ち。 「このままで将来はどうなるの?」という焦り。
でも、安心してください。
そう感じるのは、ちゃんと子どもと向き合っている証拠です。
私が過去に支援したお母さんの中に、3人兄弟全員が不登校になった方がいました。最初は「自分が壊れそう」と涙ぐんでおられましたが、少しずつ学びと工夫を重ねた結果、今では全員が学生や社会人となっています。
不登校支援では子どもに目が行きがちですが、親御さん自身のケアもとても大切です。
以下では、親御さんにぜひ大事にしてほしい考え方を紹介します。
「学校に行けなかったら終わり」ではない

エンカレッジも設立20年を超えたので、今までたくさんの親御さんをカウンセリングしてきましたが、親御さんのなかには「学校に行けない=失敗」のような捉え方をされている方が少なくありません。
これは厳しい環境で頑張ってきた方や教育熱心な親御さんに多い傾向があります。
しかし、長い学生生活のなかで一時不登校になったことは、そんなに悲観することではないと私は思います。親御さんの時代は不登校はかなりの少数派だったかもしれませんが、令和の世は不登校が当たり前の時代です。
その証拠に、フリースクールやオルタナティブスクールはどんどん増えています。公立小中学校で言えば、クラスに1~2人は不登校の子がいる方が普通というところまで不登校が増えているので、「僕もお休みしようかな」と思うのはむしろ自然です。
なので「学校に行けない=失敗」ではなく、「学校に行けない=SOS」と受け止めましょう。つまり今の状況ではうまくいかないから一度立ち止まって再確認して欲しいという子どもからの合図と受け止めればいいのです。それは失敗ではなく次につながるステップです。
子どもが悪いのではない。親が悪いのではない。歯車が狂ってしまっているから、再度確認してお母さんもお父さんも子どももみんながそれぞれ自分にできることをしていくことで絡まってしまった歯車を再度スムーズに回るようにしていこう。それが家族療法の考え方です。
事実、私が支援してきた子どもたちのほとんど全員が、その後、自分に合った学びや場所を見つけ、社会に出ています。
令和の時代に不登校になったこと自体は悲観せず、ただ「学校に戻りたい」と思うのであればしっかりと対応していくことが大切だと感じています。
周囲の目は気にしない

子どもが不登校になると「ダメな親と思われている気がする」と気になってしまいますよね。
周りが気になる気持ち、とてもよくわかります。しかし、周囲の人たちも案外こちらが思っているほど批判的ではありません。
「隣の芝生は青い」ではないですが、円満そうに見えても実はゲーム依存や浪費で悩んでいるというケースも多々ありますし、今は落ち着いてるけど昔は大変だったというケースもあります。
なので、できるだけ周りの目は気にしないこと。それでも気になるときは、もしかしたら親御さん自身の過去のトラウマや認知の仕方が周りの目を気にするようにしているのかもしれませんので、子どもの不登校の問題と、自分自身のものの捉え方を別問題として解決策を探っていくのがおすすめです。
共感疲労に注意する

「共感疲労」という言葉をご存じでしょうか。
これは他者に感情移入しすぎて、精神的に消耗する現象です。
お子さんを大切に思うあまり、共感しすぎて親御さんの方が疲れ切ったり、途方に暮れているケースもしばしば見受けられます。
親御さんご自身が疲れきってしまえば、子どものサポートどころではありません。
なので、自分が疲れるほどに感情移入していないかは、時々振り返ってみてください。
学校への連絡・訪問は無理にしなくていい

不登校の親御さんによくあるのは「毎日学校に《今日は行けません》の連絡をするのがつらい」というものです。
近年不登校の子が増えているので、学校としても対策を焦るあまり親御さんとの連携を増やそうとしたり、熱血先生などは良かれと思って頻繁にご家庭を訪問したりすることもあると思います。
しかし、一度不登校になると、1日で状況が改善することはほとんどないです。毎日少しずつ子どもの変化を促してやっと再登校という流れになるかと思うので、毎日毎日そんなに報告する内容もないですよね。
なので、親御さんが辛かったら学校との連絡回数を減らしましょう。
学校側も「保護者を孤独にしないように」と良かれと思って連絡していると思うので、「毎朝大変なので連絡回数を減らしたい」「なにか変化があったらこちらから連絡する」「毎日ではなく、週1回にしたい」などと言えばすんなりわかってくれることがほとんどです。
もちろん、親御さんが学校と密に連携を取ることで安心できるなどの場合は、連絡してもいいですが、大変だと思ったら連絡回数を減らしてみましょう。
仕事は辞めなくていい

お子さんが不登校になったとき、「仕事を辞めた方がいいのでは」と思い悩むお母さんがとても多いです。
しかし、基本的に仕事は辞めないほうがいいです。
理由は以前こちらの記事で詳しく書いたのでご覧ください。

親の家事・手間を減らす

不登校でお子さんが家にいると、お昼ごはんの準備も大変ですよね。
一生懸命お昼ごはんを作られている親御さんもおられるのですが、基本的に不登校のときのお昼ごはんは簡単なものがいいです。「学校だと給食で嫌いなメニューも出されるけど、家だと毎日好きなものが食べられる」と誤学習しないためです。
なので、不登校のときのお昼ごはんは前日の残りのような簡単なものや、レパートリーをあまり増やさないことで「今日もうどんか~飽きたな~給食が懐かしいな」という気分になるくらいが丁度いいです。
ただし、もしいじめなどが原因で不登校になった場合はまず心の傷を癒さなければならないので、お昼ごはんも好物を出すなどして心のエネルギーが溜まるようなケアが必要です。
なので、その時々の子どもの様子や状況を見て判断していくことになります。
希望を持つ

不登校が辛い大きな理由の1つは、「終わりが見えない」ということでしょう。
「この子たち、ちゃんと学校に戻れるのかな…?」
「この状況が、いつまで続くんだろう…」
そのような不安が、毎晩のように増幅していくかもしれません。
しかし、私が今まで支援してきた1600人以上の子ども達はみんな再登校できました。「一度不登校になっても、再登校する子の方が多い」と思って、落ち込まないでください。
親が追い詰められている、苦しんでいるという空気は、親が隠していても子どもはなんとなく感じ取っているものです。なので、親御さん自身のケアを大事にしながら、再登校を焦らず、「きっと大丈夫」と希望を持ってほしいと思うのです。
それに、再登校の経験は、子どもの人生にとって大きな自己効力感に繋がります。
バンデューラの有名な心理学実験によると、成功体験を積み重ねることで、行動への意欲は飛躍的に高まることがわかっています。「行けなかったのに、行けるようになった」という体験が、その子がその後の人生を歩むうえで「自分はできる!」という自信になるのです。
エンカレッジのクライアントさんからも「不登校を乗り越えた経験が今の子どもの自信になっているのを感じます」という言葉を何度も聞いてきました。
なので、不登校は悪いことばかりではありません。希望を持って、日々家庭内対応をしていきましょう!
「そんなこと言われたって、希望なんて持てない」と感じたときは、それは親御さんの心の方がSOSを出しているのではと思います。
エンカレッジでは無料オリエンテーションで、親御さんのカウンセリングも承っています。「もうどうしていいかわからない」「涙が止まらない」と思ったら、一度専門家に親御さんのメンタルケアも相談されてもいいかもしれません。
「兄弟全員が不登校のときは+αの対処法を!親のケアもポイント」まとめ

兄弟全員が揃って不登校だと、親御さんは本当に大変だと思います。
兄弟のうち1人が不登校のケースより、兄弟全員が不登校の方が再登校へのハードルがグッと高くなるからです。だからこそ、兄弟全員が不登校のときは、単なる個人への「不登校対応」ではなく「兄弟全体に対する戦略的な不登校対応」が大事になってきます。
そのためには、まず一番上の子から再登校の道を探ること、上の子から下の子に対してどのような影響がありそうかパターンを予想しておくこと、親御さん自身のメンタルケアにも目を向けることが大切だと思います。
兄弟全員が不登校になった方にとって、本記事がなにかの参考になれば嬉しいです。
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